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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第四十四話




「――で、結局また僕はこうなった訳か」


――ベッドの上で横になりながら僕は溜め息混じりそう言葉を漏らした。
僕は今現在…医務室のベッドにて絶賛、絶対安静を頂いていた。

あのヴェイグとサレの戦いの終了後…皆で帰っている途中、僕は気を失ってしまったらしい。
で、僕は結局そのまま医務室送りとなり、アニーから定番となった笑顔と絶対安静というお言葉を頂き数日…今現在の状態となっている。


「…はぁ…暇だなぁ…」


「――よぅ、元気そう…てか暇そうだな」



溜め息混じりにそう呟いていると、不意に扉が開く音とそんな声が聞こえた。


「ぁ…アルヴィン」


「よ、見舞いに来たぞ」


扉の方を見ると、ニッと笑って片手を上げるアルヴィンが居た。
アルヴィンはそう言うと此方に歩み寄り、近くにある椅子に腰掛けた。


「気分は良いみてぇだな…。いやー、良かった良かった」


「全く…誰のせいでこうなったと…。……皆とはどうなった?」


僕の様子を見て笑いながら言ったアルヴィンに、苦笑を浮かべて言うと、僕は少し不安気にそう聞いた。

僕が気を失ってから…アルヴィンと会うのはこれが初めてだ。
少なくとも…僕が眠っていた間に、裏切りの話や今後の事について話をしたであろう。
いくら人質が居たからとはいえ、アルヴィンのした行動は決して許される物じゃない。


下手したら…このギルドを辞めさせられるかもしれない。


僕の言葉に、アルヴィンは小さく吐息を漏らすと口を開いた。


「メリアやカノンノから聞いてなかったのか?」


「うん。なんかカノンノは…僕が目を覚ましてからお見舞い来なくて、メリアは来てもその辺の話はしてくれないから」


「…成る程ねぇ。俺のした裏切り行為は、絶対に許されるべき行為じゃねぇ、とよ」


「…それで…?」


「しばらく監視付きで、これから三カ月は依頼完了しても報酬無し、だとさ」


「……へ…?」


アルヴィンの出した言葉に、僕は思わず呆然としてしまった。え…それって…アルヴィンはまだこのギルドに居られるって事?


「おーおー、驚いてんな衛司。ま、結局…このギルドもお前や優等生と同じくらい、お人好しって事だ」


「そっか…アルヴィン、このギルドに居られるんだ…良かった」


僕の様子を見て笑うアルヴィンに、僕は安心した吐息を漏らして言うとアルヴィンにつられて小さく笑った。


「良かった、か。…まぁ、嫌われる奴には嫌われたけどな」


「え……?」


不意に、アルヴィンがそう言って頬を掻いたので小さく首を傾げてしまう。
僕のその様子をアルヴィンは見ると、先程かいた頬を見せてきた。その頬は、僅かに赤みが指していた。


「此処に来る途中にメリアに一発殴られた。『…私は絶対許さない』…って言われちまったよ」


「…メリア…」


「…ま、その方が当然だよ。むしろ…そんぐらいの方が俺は安心するからな」



「そっか…だからメリア、アルヴィンの事を話さなかったのか」


アルヴィンの言葉を聞き、メリアの事を思い出してそう呟く。





「ま、お前の元気そうな姿が見れて良かったわ。俺はそろそろ依頼でも行ってくるから」


「…無報酬なのに?」


「言うなよ、それを…強制されてんだから仕方ねぇだろ」




僕の言葉に頭を掻いて苦笑を浮かべて答えるアルヴィンに、再び小さく笑ってしまう。
でも、良かった…アルヴィンがまだこのギルドに居れて。


「あ、後…バランの事だが、アイツはオルタ・ヴィレッジで働く事になった。アイツも一応、研究員だし。…良かったら会ってやってくれよ。アイツ…またお前と話したいって言ってたからな」



アルヴィンはそう言って最後にニッ、と笑うと医務室を出て行った。……気のせいかもしれないけど…そのアルヴィンの後ろ姿は、どこか本当に…心から安心しているように見えた。



―――――――――――――



「――また…暇になったなぁ…」


アルヴィンが出て行って暫く――僕はベッドに横になってボーッと医務室の天井を見上げて呟いた。
幾ら絶対安静と言えど、眠くなければ暇なのでそう呟いても仕方が無くなってくる。


「本当…暇だなぁ…」


「――えっと…衛司…いるかな…?」



天井を眺めたままそう呟いていると、不意に医務室の扉をノックする音と久しぶりに聞く声が聞こえた。


「…カノンノ…?」


「う、うん…入っても大丈夫…かな?」


「あ…うん、大丈夫だよ」


僕の問いにそう、少し戸惑いがちにカノンノが医務室の外から言ってきた。
僕が言葉を返すと、カノンノは扉を開け此方へと歩み寄ってきた。


「…久しぶりだね、カノンノ」


「うん…久しぶり。…体、大丈夫?」


「うん、今のところはなんとかね」


僕の様子を見ながら言ってきたカノンノに、出来るだけ微笑んでそう答える。
僕の返答にカノンノは安心したような表情をすると、近くの椅子に腰掛けた。


「そっか…良かった…本当に何にもなくて」


「うん…皆のおかげだよ」


僕の言葉を聞き、カノンノは安心した表情を浮かべ僕の顔を見るも…少しすると顔を赤くして顔を逸らした。


「?…カノンノ…?」


「ぁ、え、えっと…何でもないよ、なんでも…っ!」


カノンノの様子に少し首を傾げてしまい、カノンノは慌てた様子で手と首を横に振って言ってきた。


「…でも、なんか様子が変だけど…」


「それは……っ…ねぇ、衛司…」

カノンノの様子に僕は不思議そうに言うと、カノンノは少し悩むような表情をした後、決心した表情になった。


「?何、カノンノ…?」


「えっと…衛司が操られてる時…私の声、届いてた…よね」



不思議そうに見る僕にカノンノが真剣な表情で確認するようにそう言ってきた。
操られ、意識がまともに無かった中…確かに彼女の声は届いていた。そのおかげで僕は助かり、今此処にいるようなものだし。






「うん…確かに届いてたよ」


「じゃあ…アレも覚えてる…?」


「アレ……?」


「私が……『衛司が大好き』だって事…」


「ぁ……」


カノンノが真剣な表情のまま、少し頬を赤くして出した言葉に、あの時僕を助けてくれた時の言葉を思い出す。
……でも、あれって…


「あれって…やっぱり友達としてって意味じゃ…ないよね…?」


「……衛司ならそう聞いてくると思ったよ。…この際だから思い切って言うよ。私は…衛司が好き。『友達』とかじゃなくて『異性』として、私は衛司が好きなんだ。始めはよく分からなかったけど…衛司に頭を撫でてもらったり、絵を信じてもらったり、褒めてもらったりすると…ロックス達にしてもらう『嬉しい』とは、全然違うんだ。衛司が居なくなった時…本当に悲しくて…凄く傍に戻ってきて欲しいって心から思った。それで…今此処に戻ってきて…今凄く嬉しくて…恋しくて…。今ならはっきり言える。私は…乾衛司が一緒に傍に居てほしいくらい大好きなんだ」


僕の返答に少し呆れた表情を見せた後、僕を真っ直ぐと見てそう…所謂、『告白』をしてきたカノンノ。
言い終え、恥ずかしかったのか徐々に顔を真っ赤にしていくカノンノに、僕は思わずつられて顔が熱くなっていくのを感じる。
流石に此処まで言われて気付かない程、僕は鈍感ではない。
彼女は本当に…心から僕の事を……。

そこまで考えると、今…まるで僕の答えを待つように顔を赤くしながら真剣に僕を見るカノンノを上手く見れなくなってしまう。



今の僕は…多分彼女と同じくらい真っ赤だろう。


「……衛司…?」


「ぁ、その…えっと…ごめんね。…僕、こういうの初めてだから…上手く頭が働かなくて…」

僕を見ながら徐々に不安そうな表情になっていくカノンノに慌てながらそう答える。
僕はゆっくりと深呼吸して落ち着くと、真っ直ぐとカノンノを見て口を開いた。


「…僕、こういう経験とかないから全くわからないけど…僕もさっきカノンノと言ってた事と同じ事があるんだ。カノンノの笑った顔を見てると心から安心する時がある。カノンノが悲しんでるのを見ると凄く不安になる時がある。カノンノの声を聞くと心が休まる気がする。…操られてる時…カノンノの声を聞いて救われた気がした。あの時のカノンノを見て、戻ってきて良かったと心から思った。…それで今、カノンノの言葉を聞いて…嬉しいって思えてる。僕も…はっきりと言える。僕は…カノンノ・グラスバレーの事が…大好きなんだ」



自分の思い付く限りの言葉を、真っ直ぐとカノンノを見てそう告げる。
告白ってこんなに恥ずかしいものなんだ…今僕の顔は相当真っ赤だろう。

思わず少し頬を掻いてカノンノを見ると…僕からの返答が予想外だったのか顔を真っ赤にして驚いたような表情をしていた。





「あの…衛司…」


「う、うん…」


「それはその…両想いって事…」


「…に、なるね…うん…」



お互い顔を赤くしながら少し途切れ途切れに言葉を出していく。
そして暫くして……



「……え」


「……え?」


「…衛司いぃいぃぃっ!」


「ごぅふっ!?」


カノンノが僕の腹の辺りに突っ込んできた。
あまりの衝撃に思わず何か出掛けたが…なんとか堪えた。


「え、えっと……カノンノ…」


「衛司…良かった。…私、凄く…嬉しいよぅ…」


「…うん…僕も同じ気持ちだけど…ちょっと今の体勢は…」


「ぅ…?…ぁ……」


僕からの返答が嬉しかったのか、僕に抱きつくように喜びを表すカノンノに少し戸惑いながらそう言うと、カノンノは僕から少し離れて…今の状態を理解した。
ベッドに上半身を起こした状態でのっている僕に、先ほど突っ込んできた勢いで必然的にベッドにのる僕の上に乗り、少し密着した状態のカノンノ。
お互い告白しあい、分かり合った直後という事もあり顔も真っ赤で……とりあえずもう、色々とヤヴァイ。ヤバイじゃなくてヤヴァイ。



「……ん……っ」



…そして、カノンノ。何故この状況で目を閉じる。いや、分かるけど……今はヤヴァイと…。

「…………っ」


そんな事を思いながらも、それに応えようと目を閉じて、顔を近付けようとする僕も、きっと同じくらい頭がショートし始めてるんだろう。



そうして、お互いに唇が触れ――


「――ぁー…悪ぃ、衛司…ちょっと忘れもんし…――」


「「!!」」


――ようとした瞬間、救世主《アルヴィン》が扉を開けて現れ、僕達は顔を離した。

ありがとうアルヴィン!色々残念な気持ちが多いけど、助かったよアルヴィン!

そう、思ってアルヴィンの方を見ると…アルヴィンが凄い、言葉では表せないような、かなり驚いてる表情をしていた。

何を驚いているんだろうと思って冷静に現状況を見ると…いくら顔を離したとはいえ、上半身を起こしている僕の上に乗り、そしてお互い顔が真っ赤で、近い距離にあるカノンノと僕。

…うん、第三者《アルヴィン》がそんな顔をするのは当たり前だろう。


とりあえず説明《言い訳》しようと言葉を出そうとした瞬間、アルヴィンはフッと、理解したような笑みを浮かべて…


「…分かった。とりあえず、小一時間、この医務室に人を近付かせなきゃいいんだろ?ま、ゆっくりやってくれや」


―そう、言ってのけた。


「「――ちょ、せめて言い訳させてえぇえぇぇぇっ!」」



――その後、アルヴィンの説得に小一時間かけたのは、言うまでもない。





 
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