インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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蠢く影
あれから一週間経った。
(アイツ、何のためにあんなこと………)
まったくわからない。わかるわけがない。
(何故キス!?)
疑問が募っていくばかりだ。うん。まったく謎だ。
本人は俺が惚けている間に顔を赤くしてどこかに行くし、というかあの体制は絶対にこけそうになって、俺が止めようとして………その………
(ダメだ。最悪な結果しか出てこねぇ)
何度も考えを巡らすが、「パシッ」結局は最悪最低な方向に思考が進んでいく。
「風宮」
俺は何かしたのか? いや、何もしていないはずだ。何もしていないのに、何故?
「風宮!!」
―――パシッ
俺は降り下ろされる出席簿をさも当たり前のように受け止める。
「………何ですか?」
「詳しくは聞かん。が、今は私の管轄内だ。考え事は後にしろ」
「………了解」
そうだ。今は授業中だった。時間を見ると本日最後。今日のことはまったく記憶にない。
そしてチャイムが鳴り、今日の授業は終わった。さらに時が進んでSHRも終わり、俺は机に倒れた。
(……………やべぇ。何も考えられない。とにかく帰って別装備のテストでもしてみるか)
そう思って席を立って移動する。すると、何か銀色の髪をした女の子が視界に入った。
「………?」
ボーデヴィッヒ………ではないだろうな。それに、気配が違う。
(全員、よく聞け。今から俺は誰かと交戦する。シヴァ、お前は専用機を持っているな?)
『当たり前よ。それで私は専用機持ちの警戒でいいのね?』
(ああ。その前に織斑千冬と山田真耶に警戒するように伝えてくれ)
『わかったわ』
さて、俺は乗りましょうかね。
俺はさっき女の子の気配を感知した場所に歩いて行く。
(何でこんなところに?)
そういえば、ここは確か一般生徒も立ち入り禁止になっている区域だろ。それが女の子?
(きな臭いな………)
そう思って歩を進め、立ち入り禁止の場所にも移動する。
■■■
生徒会室。そこでは四人の生徒会役員だけではなく、更識簪までもがいた。
「お前、何者だよ!」
一夏は生徒会室から廊下に続くドアを塞ぐ青い髪をした男に噛み付くが、
『止めておいた方がいいぜ、織斑一夏。お前みたいな低レベル如きが俺に勝てるわけがないんだからよ』
その男は余裕だと言わんばかりに欠伸をした。
「なんだと?」
『まぁ、機体に振り回されている時点で高が知れているが』
「テメェ!!」
一夏がキレてその男に殴りかかるが、見事に受け止められた。
「一夏君、落ち着きなさい。それであなたは私たちに何の用なの?」
『それは言えない―――が、生徒会役員とこの娘に用があるってのは確かだ』
そう言って簪を指すその男に、本音が近付いていった。
「抱っこ~」
「本音?!」「本音ちゃん?!」
本音の発言に虚と楯無は驚くが、
「……やっぱり……」
簪は何故か納得していた。
「簪ちゃん、「やっぱり」ってどういうこと?」
「……彼から、敵意が……感じられない」
「「「え?」」」
「これは、あくまでも……経験。だけど、そう思う」
簪は小学生の時から何かと難癖付けていじめられることが多かった。それ故に敵意というものに敏感であったが、目の前の男からそれは感じられなかった。
「それに…本音は…敵意を持っている人間は……避ける」
それを聞いた姉二人は納得し、一夏は感心した。
『まぁ、そういうことだ。話が納得してくれて助かる』
「……でも、私は……あなた自身は…信用していない」
『いや、それだけでも充分ッスよ』
そう言いながら本音を降ろして、
『俺の名前はリヴァイア。そのお嬢さんが言ったとおり、こっちに敵意はないッスよ、更識楯無生徒会長』
「あら、私のことを知っているのね」
『ええ。あなたはそれなりには有名ッスから。それにこちらのお嬢さんは更識簪日本代表候補生。それに布仏虚三年生に本音一年生。これで間違いないッスか?』
「な、何でそんなに―――」
一夏が何か言おうとしたところでリヴァイアは口を挟んだ。
『んで、この男が織斑一夏。一人目の男性操縦者ッスよね?』
「あ、ああ。じゃねぇ。何でお前、ここにいるんだ?」
『いつか知るだろうさ。それまでは教えない』
「―――そう。でも、教えてもらうわよ!」
楯無がリヴァイアに接近するが、
『それ以上は、妹の命が惜しければその場に止まってください』
リヴァイアは簪を人質にして盾にする。
『(あ、いい匂い………)』
そうリヴァイアが思った矢先、彼の前方から膨大な殺気が溢れ出た。
■■■
その頃、職員室では、
「何故貴様がここにいる?」
『ちょっと厄介な事になっているからね。何事もなければいいんだけど、一応用意しておいたほうがいいんじゃないかしら?』
職員室のある場所。そこは千冬が座る席だがその一角は他人から見えないようになっている。その場所の机の下で丸まっているシヴァを見つけるには、千冬が椅子を引かない限り発見できるのは轡木十蔵くらいだろう。
「………またアイツか。しかし、何故お前が感知できる」
『したのは私じゃないわ。祐人よ』
「……そうか。では、行ってくる」
そう言って千冬は出ていった。
『………さて、専用機持ちは全員揃っているかしら?』
シヴァはそう呟き、そこから消えた。
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