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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第5話 報告書再提出?貴族は屑が多すぎです!!

 こんにちは。ギルバートです。だた今母上の呼び出しで、執務室に向かっている所です。散歩中に、いきなり窓から呼ばれました。

 そう言えば、自分を鍛えているのに何もやっていない気がします。だって、仕方がないじゃないですか。この未成熟な身体で無理をすれば、正常な成長を阻害してしまうのですから。……せめて、4歳か5歳になれば多少話が変わってくるのですが。

 止めましょう。年齢に関しては、愚痴を言っても仕方が無いです。

 一方魔法関係の事ですが、もう杖を持たせてくれても良いのではないでしょうか? 常識的に考えればダメなのでしょうが、何とかならないでしょうか? 念の為に母上に聞きましたが、駄目だしされてしまいました。杖の仕組みが解らないから自作もできませんし、魔法関連の訓練は大分先になりそうです。

 領地経営も目立たずに出来る事は、思いつく限りやりました。後は領内の畑がどんどん広がって、放っておけば勝手に収穫量が増え増収してくれます。更に余裕が出来た平民は、良い道具を買おうとするでしょう。これにより、効率が上がり更なる増収につながる。この好循環に、笑いが止まりません。

 おっと、ようやく母上の執務室に着きました。周りに人が居ない事を確認し、割と力を込めてノックをします。(私のノックは、風メイジでも無いと聞こえないらしい。2歳10カ月ではしかたないか)強く叩く癖をつけてしまったので、成長したら直る様に矯正しなければなりませんね。

「入りなさい」

 返事を貰ったので入室しました。しかし母上は、何故か難しい顔をして書類を眺めて居ます。

「ギルバートちゃん。少し不味い事になったわ」

「如何したのですか?」

 私が聞き返すと、母上は書類から顔を上げ今まで読んでいた書類を私に手渡して来ました。

 その書類を受け取り読むと、今回(4か月前)の魔の森拡大事件について、報告書の再提出を求める書類でした。特に流民に関して、詳細な報告をするように記載されています。流民をドリュアス領で受け入れたのが、そんなに問題なのでしょうか?

 今回の魔の森の拡大はどこぞのアホ貴族が、ファイヤーボールを魔の森に打ち込んだ事が原因と聞いています。その詳細を母上は報告書にまとめ、王都へ送りました。私もその書類には目を通しているので、特に問題になる様な記載は無かったと記憶しています。報告書に私が気付かない様な不備でもあったのでしょうか?

(めんどいですね)

 正直に言わせてもらえば、この時私はそれ以上の感想は浮かびませんでした。だとしても、私を誰も責められないと思いたいです。次の母上の一言を聞くまでは……。

「流民達の中に、魔の森に火をつけて逃げた者が居ると言って来てるらしいわ」

「!? しかし、状況を見れば……」

「しかも、ドリュアス領に犯人がいると……」

 言いがかりもここまで来ると、逆に感心してしまいます。

「このままでは、査察団を送り込んでくるわ。後は、如何なるか……」

 母上の言葉に、私の頭に最悪の想像が浮かんで来ます。

 当然、魔の森を利用して他の貴族を落としめようとした貴族は過去に何人もいました。ですが、今回ほど見え見えの手は過去に無いでしょう。

 敵のシナリオは、こうです。

 このまま、無理やり査察団を送りつける。
 領内を、探す振りして南の魔の森に移動。
 魔の森に、火を放ち逃走。
 火を放ったのは、ドリュアス領に逃げ込んだ犯人だ。
 これは、ドリュアス家の領地監督不行き届きである。
 この責任は、ドリュアス家にある。

 最悪だ!! 何を言っても言い訳とされるでしょう。

「しかし査察団を理由なく拒否したり、怪しい査察官を捕まえたりすれば……」

「二心あり。……と言う事にされるわね。多少無理があったとしても」

 本当に最悪だ!!

 これまで父上と母上は、取れうる限りの対策はとって来ました。

 更に先人達が築き上げてきた、魔の森に関する7つの法と2つの規則があります。

1.領内は許可ない者の飛行を禁止する。
2.魔の森付近の道は、許可ない者の通行禁止。
3.魔の森付近の道を通行する者は、護衛と既定の監視つける事。
4.領の出入り口に関所を設け、出入りする者を調べ手形を発行する。
5.手形が無い者は身分に関わらず、守備隊が拘束する権利を有する。
6.守備隊は職務質問の結果、任意同行を求める事をが出来る。
7.職務質問・任意同行を拒否した者は、手形の有無や身分に関わらず逮捕出来る。
8.魔の森付近の守備隊は、地元出身の信用おける者だけとし徹底的に教育した。
9.新しく領内に入った者は魔の森から遠い北部や東部に住まわせた。

 これは“魔の森絶対9原則”と言われて居て、これ程の決まりが出来ていたのです。特に1~7の原則は“魔の森7法”と呼ばれ、魔の森を使った過去の事件から王が認め推奨したものであり、王族ですら逆らえない程の強力な行使力を誇っています。これ程の特権が認められている守備隊員は、規定違反を犯した時の罰則も厳しい物になります。

 当然の事ですが、魔の森に関する事件を起こした者の罰は、貴族平民に関わらず非常に重いです。

 国土に害成す逆賊として罰せられるのですから、当然と言えば当然です。罰則は一族だけでなく、状況によっては同僚上司にまで及ぶ事もあります。

 この様な状況から、まともな貴族なら魔の森に絶対に手を出しません。また足の速い騎獣は関所でチェックされますし、飛行可能な騎獣は目立つ為、必ず領地の包囲網に引っかかります。徒歩や馬では、火を付けた後に幻獣や魔獣・亜人から逃げる事は不可能です。よって、やれと言われて引き受ける者は居ないでしょう。

 ですが今回は、それらを犯人探しの名目ですべて無視できます。

 どうにかして“アホ貴族が犯人で流民は被害者である”と、認めさせなければドリュアス家は終わります。

「兎に角、分かっている事をまとめてみましょう。アズロックからも、手紙が来ているし」

 母上の言に私は頷きました。

 そもそもこのような状況になったのは、アホ貴族が原因です。どうしてこれ程の状況があるのに、魔の森へファイヤーボールなど打ち込んだのでしょうか?

 流民達の話をまとめると、こうなります。


 ドリュアス領を出て、南のガリア国境へ向かい、道のり四分の一程の場所にある村が今回の惨劇の舞台である。

 その村の西側に、魔の森拡大防止の為の砦が在った。この砦のおかげで、住民は亜人の被害に怯える事なく暮らしていた。

 その日、亜人討伐の祝賀会が砦で行われていた。貴族は例外なく酒が入り酔っていた。些細な事から貴族が口論を始め、それが諍いに……終には決闘騒ぎにまで発展し魔法を使い始めた。

 そうこうしている内に、一人の貴族が放とうとしたファイヤーボールの制御に失敗。魔の森に着弾していしまう。威力自体は大した事が無かったものの、運悪く近くにマンティコアが居た。

 マンティコアは反撃の為砦を攻撃。砦の貴族と交戦状態になる。

 当然、砦に複数の貴族(メイジ)が居た事から、交戦は派手なものになる。魔法が流れ弾となり、次々に魔の森に着弾した。

 そうなると当然、魔の森から次々に幻獣・魔獣の増援が現れ群れを生す事となる。群れはどんどん大きくなり、最終的な数は30頭を超えていた。

 一方で平民達の動きだが、交戦開始直後に砦で働いていた村人が逃げ出した。

 村人は村に逃げ帰り、危険を知らせる事に成功する。報告を聞いた村長の判断は早く、村人達は早々に避難を開始。

 だが悪い事に、亜人がこの混乱に乗じて砦に攻め込んできた。ここで砦の士気は完全に瓦解。逃げ出す者が出始めた。

 やがて亜人達は、村にたどり着き荒らし始める。

 全て終わったのは、朝日が昇ってからだった。

 亜人が去った後、村を見てみると既に所々木が生え始めていた。

 村人達は、村を棄てる事を決断。

 一部はモンモランシ領へ逃げたが、殆どの者がドリュアス領へ。

 当初86人いた流民は、亜人の襲撃で次々に数を減らし、最終的には63人しか生きてドリュアス領へたどり着けなかった。犠牲になった、23人の中には高齢だった村長も含まれていた。

 以上が事の顛末である。

(ハードです。ハードすぎます。そして村長。貴族より優秀です)



 続いて、父上の手紙に書いてあった情報です。

 村が魔の森に呑まれた日より2カ月が経ち、傷の治療が済んだ貴族達はトリスタニアに護送された。そこで、裁判が始められる。最初の内は事態を深刻に受け止めたのか、貴族達は大人しくしていた。だが裁判中に貴族の一人が突然、自分達は無実だと主張し始めたのだ。

 その貴族の言い分では、森に火をつけ自分達だけ逃げたから、平民に被害が出なかったと主張したのだ。

(なんて屑ばかりだ。村人達に……村長に謝れ!!)

 現場が森に呑まれてしまった為、再調査出来ずにいるとモンモランシ領に逃げ込んだ村人が数人見つかったのだ。見つかった村人達の証言は、砦から逃げてきた村人が村長に危険を知らせ避難したというものだった。この言葉を曲解して、信憑性有りとされてしまったのだ。

 更に屑共が自分達の無実を、始祖ブリミルに誓ったものだからさあ大変。

 恐らく誰かからの入れ知恵なのでしょうが、その辺りを父上達が調査してくれているそうです。

 本当に屑共は、絞め殺してやりたいです。(怒)



 しかし本当に困りました。今とてもピンチです。現状を打破するには、如何すれば良いでしょうか? 凄く頭痛いです。

 正直に言うと、父上達に期待するしかない状況です。それでも、何もしないで待っている訳には行きません。元流民達に、何か証拠になる物が無いか協力を求めました。

 元流民達は協力的でした。派遣待機中こそ不満を言っていましたが、ドリュアスでの生活は明らかに以前の生活より豊かだからです。

 しかし、証言はいくらでも出て来ますが、証拠となると全く出て来ませんでした。

 部下達からは現場の調査案も出ましたが、現場は魔の森に呑まれています。犠牲を覚悟し調査を強行するにしても、かなりの大戦力が必要になる上とても実が有るとは思えません。

 何より領の防衛を疎かにする訳には行きません。敵がその隙を待っているかもしれないからです。むしろ、そこが本命である可能性さえあります。

 モンモランシ伯にも協力をお願いしました。伯爵も今回の事に相当腹を立てていたらしく、二つ返事で了承してくれました。

 まあ、アホ貴族の明らかな嘘は伯爵も理解しているでしょうし、自領の近くまで魔の森の浸食が進むと言う実害まで伴っているのです。そしてなにより、平民に責任をなすりつければ助かる。等という前例を作れば、今後魔の森は一気に拡大する事になるでしょう。これは、全ての貴族が避けたい事態だと思いたいです。

 そんな中、王都で動きが有りました。アホ貴族共の嘘を、非難する貴族が増え始めたのです。切っ掛けは、ヴァリエール公爵の発言でした。

「平民に責任転嫁すれば良い、という前例を作ってはならん!! もしこれを許せば、魔の森はあっという間に、このトリステインを飲み込むであろう。それは、魔の森拡大を今まで防いで来た先人達への冒涜である!!」

 かっこいいです。無茶苦茶かっこいいです。そして、私が言えない事を言ってくれました。是非、生でこの言葉を聞きたかったです。

 この発言を真っ先に支持したのは、ドリュアス家・モンモランシ家・クールーズ家です。

 ドリュアス家・モンモランシ家は、当事者なので当たり前ですが、クールーズ家は現在西と南を魔の森に囲まれています。この上、東にあるドリュアス家が魔の森に呑まれれば、クールーズ家はお終いです。

 続いて、魔の森に隣接している領を持つ家と、グラモン家が支持を発表します。

 魔の森に領地を隣接させている家は、クールーズ家の事は他人事ではないのです。グラモン家は代々続く軍人の家系です。アホ貴族達を許しておけなかったのでしょう。アホ貴族達を“美しくない”と断じていたそうです。

 ここで勢いがついたのか、公爵の発言を支持する声は瞬く間に貴族達の間に広がって行ったそうです。終いにはアホ貴族達の実家も、勘当に加え公爵の発言を支持する始末です。

 入れ知恵をしていた貴族も、この状況でアホ貴族達を見捨てた様です。

 周りが全て敵になったアホ貴族達は、悪いのは自分達じゃないと訴えますが、もはやその言葉に耳を傾ける者は居ませんでした。

 一部の貴族達は、それでも念の為と査察を推奨していました。恐らくですが、彼等が今回の黒幕なのでしょう。しかしその目論見は、当のアホ貴族達によって砕かれる事となったのです。

 父上達の同僚がアホ貴族達に接触し、アホ貴族に余計な事を吹き込んだ者達を反逆者に仕立て上げました。そして彼等が騙されたと言う設定で話を進め、同情的な振りをし情報を引き出したのです。……本来ならこれでも分が悪かったのですが、次の査問でアホ貴族達がやらかしてくれました。差出人不明の手紙を提出し、そこには“全てを平民の所為にすれば助かる”という内容が書かれていました。そして「自分達はこの手紙に従っただけだ」と、言い始めたのです。だから自分達には非は無いと主張し、反逆の証拠を提出した自分達の減刑を要求しました。

 ……ホントにアホです。始祖ブリミルに誓ったでしょう。

 これには、王宮が騒然となりました。黒幕達も、流石にここまで阿呆とは思っていなかったでしょう。査察の話は、あっという間に消滅。ドリュアス家は、つかの間の平穏が約束されたのです。

 そしてヴァリエール公爵。本当にありがとうございます。アホ貴族達から情報を引き出した人。本当にありがとうございます。






 アホ貴族が、本当に阿呆で助かりました。 
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