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八条学園怪異譚

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第一話 湧き出てきたものその七


 そのうえでだ。こうは言ったのだった。
「そうね」
「私ね、一緒だったらねってね」
「一緒って?」
「うん。高校だけじゃなくてね」
 今も少し先の、今の二人にとってはかなり先の未来だけでなくだというのだ。
「ずっとね。一生ね」
「一緒だっていうの?」
「一緒にいたいの。だって私達お友達だから」 
 聖花は純粋だった。だからこその言葉だった。
 しかし愛実は彼女のその言葉を聞いて尚更暗くなる。だが聖花はそれに気付かないまま愛実、他ならぬ彼女にこう言い続けるのだった。
「それでそう思ってるけれど」
「お友達だから」
「最初に出来た友達だったわよね」
 笑顔での言葉だった。彼女だけは。
「そうよね。だからね」
「これからもずっと」
「そう。ずっと一緒にいたいの」
「だから高校もなの」
「私なりに進路を考えたけれどね」 
 それもあった。だがそれに加えてなのだ。
「やっぱり愛実ちゃんと一緒にいられるから」
「同じ高校で同じ科にするの」
「嬉しいわ。若し受かったらね」
「そうなの。私と一緒だから」
「愛実ちゃんもそうよね」
 この質問は聖花にとっては答えは一つしかないものだった。
「ずっと一緒にいたいよね」
「う、うん」
 愛実も答えはした。返答は聖花の予想したものだった。
 だがそれでもそれは躊躇したものだった。聖花は気付いていないが。
 こう答えてだった。愛実はそのうえで聖花に顔を向けて答えた。
「私もね」
「そうよね。私一緒にいたいから」
 聖花は無邪気でさえあった。愛実の心の中に気付いていない。
 それで前を見ながら言うのだった。そうしたのだ。
「いいわね」
「でしょ?私達がお互いに結婚しても」
 中学生にとっては夢の様な未来のことも話す。
「それでもね」
「結婚しても」
「そう。結婚して子供ができても一緒にいよう」
「子供達と一緒に」
「いいわよね。お母さんも子供も友達同士って」
 夢だった。聖花は今夢を語っていた。
「それって凄くいいと思わない?」
「何か聖花ちゃんって」
「私って?」
「弁護士になるよりそっちの方を見てるみたい」
 愛実と一緒にいる、そのことの方をより見ているのではないかというのだ。
「私達とのことを」
「そうかもね。だってお仕事よりもね」
「それよりも?」
「お友達の方が大事だから」
 これが聖花の認識だった。そう考えているのだ。
「だって。お仕事はそれが駄目でも他のお仕事があるけれど」
「それでもお友達は?」
「そう。お友達は他にはいないのよ」
「この場合私は」
「そう。愛実ちゃんは一人だから」
 他には替えられないというのだ。誰にも。
「だから絶対にね。ずっと一緒にいたいの」
「私がお友達だから」
「一緒にいようね。本当に」
「う、うん」
「私愛実ちゃんのことが大好きで」
 そしてだというのだ。それに加えて。
「何があっても信じて助けるから」
「信じてくれるの?私のこと」
 ふとだ。この言葉は沈んでいる愛実の心に届いた。それでだった。
 聖花の方を振り向いてだ。こう問うたのである。
「ずっと。そうしてくれるの」
「それで助けてあげるから」
「お友達だから」
「お母さんずっと言ってるの。お友達はね」
「信じて助けるものだから」
「うん。だからね」
 聖花は笑顔で愛実に言っていく。
「一緒にいよう。信じて助けて」
「私が聖花ちゃんを」
 信じることはともかくだった。その次のことだった。
 そんなことができるとはとても思えなかった。何もかもがだ。
 自分は聖花に劣っていると思っていた。それではとてもだった。そしてそのことを俯いた顔で口からだ。漏らす様にして述べたのだった。 
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