八条学園怪異譚
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第十五話 足元にはその十二
「ナポリだがな」
「あっ、南イタリアの」
「あの町ですか」
二人もナポリのおおよその場所はわかっている。
「あそこで見たんですか」
「マフィアを」
「マフィアはシチリアでナポリはカモラだがな」
ここで日下部はマフィア以外の組織の名前を出した。
「また別系列だ」
「ナポリとシチリアでは」
「また違いますか」
「そうだ、また違う」
日下部は二人にイタリアの犯罪組織の違いについても話した。
「系列が違う。カモラはよく知らないがマフィアは元々山賊だった」
「あれっ、確かフランスへの抵抗組織がはじまりじゃ」
「あれは違う」
聖花に答える、その話は伝説だったと。
「実際は山賊を警察に仕立てならず者達にぶつけたのがはじまりだ」
「毒には毒をですか」
「そういうことだ」
「元は山賊でそれが警察になって」
「マフィアになった。山賊の品性は言うまでもないだろう」
賊は賊だ。ならず者でしかない。
「その連中を警察にしたらだ」
「そうなったらね」
「もう何するかわからないわよね」
愛実と聖花は日下部の話を聞いて二人で眉を顰めさせた顔を見合わせてそのうえで話をした。想像してすぐにわかることだった。
「山賊って犯罪者だし」
「犯罪者が警察になったらね」
「もう悪いことしたい放題じゃない」
「滅茶苦茶になるわよ」
「だからマフィアはあらゆる権益を握った」
シチリアのそれをだ。
「そして世界的に有名な犯罪組織になっていった」
「そういう歴史があったんですね、マフィアにも」
「あの連中にも」
二人は日下部の話を聞いて納得した。すねこすり達はその二人に対してあらためて言ってきた。
「まあこの町にはマフィアはいないからね」
「おかしな人間はいない訳じゃないけれど」
そうした輩もどの国にもいる。
「マフィアはいないよ」
「精々ヤクザ屋さん位だよ」
「まあ。そういう人はいるけれど」
「それでもなのね」
「そうそう。最近町でそうした人達がどんどん殺されてる事件もあるけれど」
八条町は今その事件でも有名になっている。
「何か首切ったり内臓取り出して目をくり抜いたりね」
「物凄いのが暴れてるみたいだけれどね」
「藤会でしょ?知ってるわ」
「あそこが今壊滅してるのよね」
二人もその連続殺人事件のことは聞いて知っていた。
「そんな無茶苦茶な殺し方してるっていうのも噂で聞いてたけれど」
「あれ一体誰がしてるのかしら」
「僕達にも犯人はわからないんだ」
妖怪達は少し眉を曇らせた感じで答えた。
「実はね」
「もう神戸の藤会は全滅したけれどね」
文字通りそうなったのだ。
「最近神戸のゴロツキもどんどん無茶苦茶な殺され方してるけれど」
「僕達の誰もその犯人は見ていないから」
常に人と共にいて影から見ている彼等でもだというのだ。
「誰かわからないんだよ」
「妖怪じゃないかとも言われてるけれどね」
「凄い殺し方らしいし」
「誰なのかしら」
二人にしてもそのことが気になった。日下部も怪訝な顔になって首を傾げさせて二人に言ったのだった。
「私もその一連の事件について聞いているが」
「それでもですか」
「誰がやっているのかわからないですか」
「首を刎ねてその頭に釘を何本も打ちつける」
暴力団の事務所が襲撃を受けこうした屍も転がっていたのだ。
「胴を断ち切られたり目をくり抜かれたり」
「聞いてるだけで吐き気しますけれど」
「本当に人間のしたことですか?」
二人はそこに人間性を見られなかった。桁外れの残虐性,そして異常性を見出して顔を顰めさせていたのである。
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