八条学園怪異譚
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第十五話 足元にはその三
「動物園の生き物じゃないでしょうね」
「とかいっても犬でも猫でもないわよね」
「そっちも」
「そもそも夜とはいえ脱走してたら大騒ぎよ」
動物園にしても犬猫ランドにしてもだというのだ。
「どんな動物でもね」
「確かに。それって危ないから」
「どんな動物でもね」
「脱走とかあったら」
「やっぱり」
「そう。動物間の人達も犬猫ランドの人達も大騒ぎするから」
そして騒ぐというのだ。そして。
聖花はクラスメイト達にあらためてこう言った。
「どっちにもいない生き物ね」
「っていうと何かしら」
「鼠?」
この生き物の名前も出る。
「あれは何処にもいるし」
「けれど足元にまとわりつくっていうからそれなりの大きさだし」
「それじゃあ鼠じゃないわよね」
「別の生き物よね」
「野良猫?」
今度はこれだった。
「野良猫なら普通にいてもおかしくないし」
「本当にいたら捕まって保護されるしね」
そして学園内の犬猫ランドに入れられる。この学園のこの場所は野良犬や野良猫の保護施設にもなっているのだ。
「じゃあやっぱりそれ?」
「妥当にそれかしらね」
「うちの学園結構以上に過ごしやすそうだし」
夏は涼しく冬は暖かいと評判である。しかも雨宿りできそうな場所も多い。
「だから実際野良猫集まってくるらしいし」
「それかしらね」
「ううん、でしょうね」
愛実もこう返す。
「まあそんなに深刻なものじゃないと思うわ」
「そうよね。野良猫ならそのうち保護されるし」
「犬猫ランド行きだし」
「特に心配することないね」
「そうね」
これで話は終わった。野良猫なら何の問題もないということになった。だが愛実はクラスメイト達との話の後で聖花と二人になるとこう話した。
クラスではなく屋上で青空を見ながら聖花の方から言った。
「今回も、よね」
「そうよね。多分だけれど」
「野良猫の可能性もあるけれど」
「妖怪だと思うわ」
聖花もこう考えていた。
「多分だけれどね」
「そうよね。ただどんな妖怪かしら」
「また調べてみる?」
聖花から愛実に提案する。彼女も青空を見ている。
「そうしてみる?」
「そうね。それがいいわね」
愛実は聖花のその提案に頷いた。
「まずは調べてみる、ね」
「博士にお聞きするのもいいけれどね」
「放課後暗くなってからよね」
「場所が何処かはわからないけれど」
だがそれでもだというのだ。
「放課後暗くなってからね」
「だったわね。じゃあその時に行けば」
「今回は普段よりは早い時間ね」
「いつも真夜中だからね」
愛実は言った。
「だから今回はね」
「早い時間でそれが嬉しいわね」
「というかあれよね」
愛実はまた聖花に言った。
「私達最近夜遅いわよね」
「そうそう。時々にしても」
「聖花ちゃんはやっぱり辛いわよね」
愛実は自分よりも親友の方がそうではないかと察してそのうえでこう言ったのである。その顔にも感情が出ている。
「パン屋さんだから」
「うん、それはね」
「朝大丈夫?ちゃんと起きられてる?」
こう子供が一人暮らしか寮生活を送っている母親みたいなことを言う。
「その辺りは」
「うん、何とかね」
「起きられてる?」
「学校に潜り込む日はその前に寝てるから」
そうしているからだというのだ。
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