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八条学園怪異譚

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第一話 湧き出てきたものその一


                  第一話  湧き出てきたもの
 聖花と愛実は小学校の間ずっと同じクラスだった。六年間。
 いつも一緒にいて仲良く遊んだ。そうして中学校でもだ。
 同じクラスではなかった。しかしだった。
 部活は同じだった。その部活は。
「愛実ちゃんかるた部にしたのね」
「聖花ちゃんもなのね」
 入部してはじめての顔合わせでだ。お互いの顔を見て笑顔になった。
 そしてだ。聖花は笑顔で愛実に言ったのである。
「クラス。離れ離れになったからね」
「ずっと一緒だったのにね」
「だからどうなるかって思ったけれど」
「部活は一緒だったね」
「うん、そうね」
 聖花の顔は明るかった。心から安堵しているものでもあった。
「よかった。本当に」
「私も。聖花ちゃんがクラスにいなくてどうしようって思ったけれど」
 二人は入学して早々かるた部に入部手続きをした。だがだったのだ。
 入部届にサインした時間が違っていたのでお互いのことを知らなかった。それで今部室の中で顔合わせをしてだ。そのうえで話をしているのだ。
 かるた部の新入部員は二人の他にはあまりいない。合わせて五人だ。
 女子はそのうちの一人、そして男子は二人だ。その彼等も見ながらだ。
 愛実は笑顔で聖花に話した。
「じゃあかるた部ね」
「うん、この部活でね」
「楽しくやろう」
 こう聖花に話したのである。
「ずっとね」
「それでね」
 今度はまた聖花からだった。笑顔で愛実に言う。
「最近お互いに行き来してなかったけれど」
「お互いのお家でよね」
「うん、けれどね」
「またお互いにお家に行って」
 そうしてだというのだ。
「部活でもね」
「うん、楽しくやろうね」
 こう笑顔で話してだ。それからだ。
 愛実がだ。聖花にこんなことを言った。
「それでね」
「それでねって?」
「聖花ちゃんやっぱりかるたやってたよね」
「やってるよ」
 聖花の返答はこうだった。今もしているというのだ。
「毎日ね。お兄ちゃん達やお姉ちゃん、お母さんに付き合ってもらって」
「そうだったの。私もね」
「愛子さんと一緒によね」
「うん、毎日やってるよ」
「じゃあ大丈夫よね、かるた部でも」
「楽しくやれるよ」
 二人でこう話してかるた部でも仲良くしようと約束した。実際に二人は部活では初心者ではないので一年の間ではエースになった。だが、だった。
 愛実よりも聖花の方が凄かった。聖花は先輩達にも引けを取らなかった。
 その彼女を見てだ。部長であるロングヘアの奇麗な人が言うのだった。
「ええと。林田さんよね」
「はい、そうです」
「貴女経験者だって聞いてるけれど」
 聖花と共に百人一首をしながらだ。彼女に話すのだった。
「それでも凄いわね」
「そうですか?」
「一年生で経験者は貴女の他にもう一人いるけれど」
「愛実ちゃんですか?」
「あの娘も確かに凄いわ」
 だが、だというのだ。部長の今の言葉はそうしたものだった。
「けれど林田さんはそれ以上よ」
「愛実ちゃんよりも上ですか」
「ずっとね。林田さんだったらね」
 聖花ならだ。どうなるかというのだ。
「もっと凄くなるから」
「そんな。私は」
「凄いことは確かよ。だって」
 かるたを続けながらの言葉だ。
「私にも今勝ってるじゃない」
「それはまぐれで」
「かるた、百人一首はまぐれじゃ勝てないわよ」
 実力、それが全てのものだというのだ。
「だから。林田さんはもっとやっていくといいわ」
「かるたをですか」
「そう。このままいけばかるた部のエースよ」
 それになれるというのだ。だからだというのだ。 
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