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八条学園怪異譚

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第六話 海軍軍人その十


「話は聞いていて存在は信じていたがな」
「それでもですか」
「やっぱり幽霊になられるまでは」
「わからなかった」
 人間は実際になってみるまでわからないことがある。それは幽霊や妖怪の存在についてもそうだということらしい。二人は日下部の話を聞いてこのことを頭では理解した。
 それでだ。二人はあらためて日下部にこう言った。
「ううん、幽霊とか妖怪とか」
「そういうのって実際になってみるまでわからないんですね」
「それでこの学校もですか」
「そうした存在が多いんですね」
「とりあえずそうした存在が多いことは理解しておいてくれたら嬉しい」
 日下部は二人の少女にこう話した。
「幽霊や妖怪もまたこの世界にいるのだ」
「人間と一緒にですか」
「いるんですね」
「見えない、隠れているだけだ」
 それだけでだ。存在しているというのだ。
「そして学校という場所は特にだ」
「そうした存在が多いんですね」
「そういうことですね」
「人気が多くそれでいて隠れる場所が多い」
 学園という場所の特色である。確かに人は多いがそれと共に物陰やそうした場所も実に多い世界なのだ。
「幽霊や妖怪は実は寂しいことは好きではないのだ」
「何か矛盾してますね」
「隠れることが好きみたいなのに」
「確かに隠れることは好きだ」
 それは事実だというのだ。
「しかしそれと共にだ」
「寂しがりなんですか」
「そういうものなんですね」
「確かに矛盾しているがだ」
 だがそれでもだという日下部だった。
「それが幽霊や妖怪の性質なのだ」
「特に夜はですか」
「こうして日下部さんみたいに出て来る」
「そういうことなんですね」
「つまりは」
「そうなる。幽霊も妖怪も特に夜の学校が好きだ」
 丁度三人が今いる場所の様にだ。
「いい場所だとは思わないか」
「確かに。如何にも妖怪が出てきそうですね」
「幽霊にしても」
 夜の学校というものはそうした雰囲気に満ちている。二人にしてもそのことは実によく実感できることだ。
「それでなんですか」
「日下部さんや他の人達も出て来るんですね」
「今みたいに」
「そういうことだったんですか」
「そうなる。学校と怪談のことがある程度だがわかった様だな」
 日下部はここまで話して二人を見た。 
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