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FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-

作者:joker@k
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第十五話 流れゆく年とSS級クエスト

 あの食事会から一年と数ヶ月。ロキという新たなギルドメンバーが加入したり、マカオが奥さんと離婚したり、ミラジェーンがS級魔導士に合格したりと様々な出来事があった。

 新しく入ったロキは金髪に眼鏡を掛けた美青年。性格は女好きな奴だが、ギルド想いの良い男だった。ナンパが趣味らしく加入早々エルザを口説こうとしたがボコボコにやられたのは気の毒だったな……少し笑ってしまったが。何よりどこか普通の人とは異なる雰囲気を持っている。きっとロキも何か事情があるのだろう。

 マカオが奥さんと離婚した件については正直あまりよく知らない。長期間のクエストでギルドに居なかったため、帰ってきたらその問題は鎮静化していた。

 そして俺が何より深く関わっていた出来事はミラとの特訓。S級試験とは多岐に渡る要素が必要な試験だが、結局のところ高い戦闘能力というのは必要不可欠だ。
 当時ミラの実力は相当に高いものだったがそれでも不安なのか俺に訓練を頼んで来ていた。元々のポテンシャルが高いためどんどんと実力を上げていき、S級の依頼をこなしているエルザですらミラに苦戦するほどだ。

 実際エルザとミラの基礎能力は拮抗しているため、あとは経験の差でエルザが一歩リードしているがミラがS級に上がればその差も埋まっていくだろうと思っていた。それほどにミラジェーンは強くなっていた。

 そしてミラジェーンは見事S級昇格試験に合格。マカロフもさすがに慣れたもので十代がS級になることにさほど動揺は見せず鼻クソをほじっていた。……慣れたというより諦めの表情だったかな。いじけているようにも見えた。これも一種の悟りの境地なのかもしれない。



 そんな様々な出来事があってから俺はすぐに長期間掛かるであろうクエストを一人で受けた。ミラとの特訓の間は軽いクエストしか受けていなかったので久しぶりに大物でも狩ろうと思う。クエスト内容はとある街を廃墟に変え、大森林をわずか一週間で荒野に変えた災害級モンスターの討伐。クエストランクはSS級である。

 この依頼は村や街が依頼してきたモノではなく評議院が依頼してきたものだ。このレベルの討伐になると依頼料金も中々に大金のため国や評議院からの依頼となる。まぁお金だけの問題でもないのだが。

 そして国などからその魔物の資料が送られてくるはずなのだが、残念ながらその魔物を調べるための隊が全滅したとの報告が上がっており資料がまったくない。その分依頼料を弾んでくれている。人によってはその情報がないだけで依頼拒否する場合もあるらしい。というよりそれが普通とのことだ。

 まぁ理解はできる。討伐系の依頼は命がけだ。敵の情報のあるなしだけで生存確率が大分違ってくる。それでも受けるのは馬鹿か戦闘狂だけだとマカロフに言われたが、否定できないのが悲しい。情報がない敵と戦うからこそゾクゾクするというのに。ただ最近は俺の知らない敵が少ないので少し退屈だ。


 それでも久しぶりの強者相手にその場所までの道中ですら高揚しているのが自分でも分かる。長期間のクエストの場合、そのほとんどの時間を移動に費やすことになる。もちろんモンスターによっては幾日も分けて徐々に体力を減らしていき討伐するため時間が掛かるということもある。俺は基本敵とは相対した時に仕留めるようにしているので移動時間の方が長くなる。

 様々なクエストを経験していると各地方に出向くため最上級の瞬間移動DBで近くまで行くことも可能だが、DBPの消費を避けるため移動は徒歩か馬車頼みだ。その魔物が住み着いているであろう場所の近くの滅びた街まで送ってもらった。

 危険なので帰りは自分でということになっている。この辺からしてみても評議院のケチさ加減が窺い知れる。馬車の警護ぐらいつけろよ。帰りがめんどくさい。そのため食料などの荷物がかさばるのだが、その点については最近使えるようになったDBでコンパクトに持ち運びできるようにしている。

 特殊DB【魔石精製の(エンクレイム)】というDBがある。これはあらゆるモノを十円玉程度の小さな黒石つまりDBに変えてしまう効果がある。変えるというよりもDBの中に閉じ込めると言った方がいいかもしれない。原作レイヴではエンクレイムは二通りあり、DBの中に閉じ込めるものとDBを製造するという効果がある。残念ながら俺ではDBの製造はできないようだ。


 馬車から降り周りを見渡すと民家の原型がほとんどなくなっている街の廃墟が寂しそうに存在していた。前世の頃は廃墟の画像を見るのが好きだったのだが、この世界に来てからはあまり好きではない。この瓦礫になっている一つ一つの民家に住んでいた人達の想いを想像すると少しいたたまれなくなる。……所詮は他人事だと思いこの気持ちを押し込める。見境無く他人の心情に同情することは危険だ。守るものはギルドメンバーだけでいい。ただ、俺をこんな心情にさせた奴はぶっ殺す。そんな自分も騙せぬ言い訳をして俺は更に先に進む。



 乾ききった荒野の大地を歩んでいると突然地響きが聞えてくる。すぐに透視のDBドーブレビスタを発動させたと同時に俺の真下の地面が盛り上がる。目視する前に条件反射でその場を飛び去ると轟音と共にそいつが現れた。

 三メートル以上はある狼のような姿をしており全身を紫色の鱗で覆われている。尻尾が八本あるのが特徴的で、その尻尾までも鱗で覆われている。蠍と狼を融合させたような魔物。俺自身今まで様々な魔物と相対してきたがこんな奴は初めて見た。亜種と呼ばれるモノではなく、新種なのかもしれない。

 俺はいつものようにデカログスを取り出し構える。一見しただけで分かる極上の強者。久方ぶりの相手に興奮が隠しきれず、口元が三日月形へと変わる。大剣の柄を強く握りしめ前傾姿勢から一気に相手に突撃を掛ける。がしかし、相手は威風堂々とその場に佇み何の防御体勢も取っていない。その絶対の自信を打ち崩す!

「――ッッ」

 だが、相手の頭部に向かって振るった魔剣から返ったきた反応は硬い鱗を少し凹ませただけであり、己が手に残る感触は痺れだった。相手が人間のように口元を歪ませ嘲笑って見えたのは俺の気のせいではないだろう。先の攻撃に対してカウンターを仕掛けなかったのは余裕の表れか。だとしたら

「――殺すッ!!」

 遠距離からのDBによる攻撃でもダメージは与えられるだろうが、この手で殺さなければ気がすまなかった。デカログスを瞬時に変化させる。ただ今までと異なるのはこの魔剣で唯一の双剣であること。

 第5の剣であり双竜の剣【ブルー=クリムソン】炎と氷の属性を持った二つの剣。炎と冷気による遠隔攻撃も可能で、2つを組み合わせることで多彩な攻撃ができる。

 高密度の炎と冷気を魔剣に付加させ再び接近する。さすがに危機感を感じたのか八つある尾で俺の攻撃を防ぎながら攻撃もする。その尾からは毒々しい液体が分泌しており一撃必殺を思わせる。

 八対二の攻防。普通ならば圧倒的不利だがそこは今まで培った勘と身体能力で補いながら相手の攻撃を捌く。四方八方から繰り出される連撃に時には避け、時には捌き対処する。掠りでもすれば得体の知れない毒が身体を駆け巡る。こいつが俺の知識にない奴もしくは新種である以上、持っている毒が遅効性か即効性かもわからないため掠り傷すらも受けるわけにはいかない。

 その緊張感ゆえか自身でも信じられないほど集中しており、現在進行形で成長していることが手に取るように分かる。これだから戦いは止められない。しかしこのままでは埒があかない。さて、どうするかと考えているとき相手の口が光を帯びていることに気がつく。

「しまッ――」

 相手の口から発射された光線は真っ直ぐに俺へと向かってきた。咄嗟にデカログスをしまい両手を向かってくる光線へと突き出す。無論諦めたわけではない。発動させるは最上級のさらにもう一ランク上のDB。六星の名を与えられた強力なDBの内の一つ。

「六星DB【ユグドラシル】」

 樹の六星DB。全ての力を吸収し触れた相手を樹に変え、さらに様々な植物を自在に出現させ操ることが出来る。名前の由来は北欧神話の大樹ユグドラシル。今はその吸収の力だけを借りる。放たれた光線は俺の掌に吸収されるように吸い込まれ消えていく。使用できるようになったばかりの六星DBなため不安があったが、見事成功した。

 そして相手の眼を見れば動揺していることがわかる。魔物と言っても人間と同じように考える生き物だ。特に強い奴ほど人間くさい。その一瞬の動揺の隙にデカログスを再び取り出し、攻撃を仕掛ける。

「爆速連携 シルファードライブ」

 爆炎の剣と音速の剣を組み合わせた爆音攻撃。超高速で動きながらエクスプロージョンを相手にぶちかます。相手は咄嗟に全ての尾を網目状に張り巡らせ防御壁を作ったが、俺にとっては絶好の機会。高速で爆炎剣をその尾に連続で攻撃する。立て続けに鳴り響く爆音と共に聴こえてくるのは敵の叫び声。目の前にあった尾はすでに鱗が剥げ、尾の半分以上が消失していた。

 あの強固な鱗を破ったのは爆発の力だけではなく、八対二の攻防を繰り広げていたときに仕掛けていた細工が効いたからだろう。炎と冷気。これを交互に攻撃することによって鱗が脆くなっていたのが効いた。温度差を使い脆くさせる。実践で用いたのは初めてだったので多少の不安はあったが、上手くできた。

「グルルァァアアアア!!」

「怒り狂っても遅いぜ? すでにチェックメイトだ」

 俺は再び六星DB【ユグドラシル】を使用する。先程吸収した光線の力を利用し、大樹を出現させその根で相手を拘束する……どこぞの木の葉、初代火影のように。時間が経てば経つほど拘束力は増していき最終的には大樹に飲み込まれ同化する。だがそんな封印まがいな方法で決着をつけるつもりはない。身動きができない間に俺は相手の真上に物体浮遊のDBスカイハイで飛ぶ。手に持つ魔剣を新たな姿へと変えて。


 第7の重力剣【グラビティ・コア】

 シルファリオンと反対の性質を持った剣で凄まじい重量と破壊力を誇る。俺はその重量にまかせて空中を高速降下するというトリッキーな使い方で相手の首元を狙う。もがき苦しんでいる相手の鱗と鱗の間にある隙間目掛けて突っ込み、そして切断した。

 大量に噴出される血飛沫に俺は勝利を確信した。生物である以上首を切断されては生きてはいけない。アバン先生もそう言っていた。

 ゴロゴロと転がる首から見える瞳は何も映してはいなかった。俺は注意深くその敵と周囲を観察し終わった後、押し寄せてくる疲労感に逆らわず大地へと寝そべった。

「あぁ~しんど」

 その荒野に俺の小さな声がポツリと空へと消えていく。ここには誰もいないが、それゆえに言葉を発してしまった。本音は自然と出るものだ。体力というのは動き回るだけではなく、精神的なものでも消費する。あの八対二の攻防はさすがに緊張感があり集中力も使った。……さて、帰るか。

 いつもなら周りの景色や生物などを見ながら帰るのだが、いかんせんここには何もない。よってDBを使い一番近くにある街まで帰ることにする。その街まで徒歩ならヘタすれば一月近く掛かってしまう。ゆっくりと帰るのは好きなほうだがここまで周りに何もないと萎えるからな。ここから一番近くにある街で評議院の者に討伐報告をする。そこからはDBを使わず帰ろう。




 すぐにDBを使い街まで瞬間移動して報告を済ませた。相変わらず評議院関係の人間に怯えられる。まぁ慣れたからもういいが。

 そこの街でブラブラしながら特産品を買い集めていると見慣れた店を発見した。大きな街には必ずあるこのレンタル店。実は気になっていたのだが中々機会がなく入らなかったがちょうどいいと思い入店してみると、そこは魔導二輪や魔導四輪のレンタル店だった。ちょうどマグノリアにあるレンタル店でも返却は可能だったので試しにレンタルしてみた。

 さっそく街から少し離れたところで魔導二輪に乗ってみる。見た目は前世の時のバイクと似たような感じだ。これはガソリンではなく魔力を使い動くので自分の魔力がすぐになくならないか心配だが、いざとなれば六一式DBがあるからいいかと思い魔導二輪を走らせる。六一式DBとは無限の魔力を与える力があり、俺の魔力を常に最大にする効果がある。勿論これを使えばDBPは消費するためあまり使用しないDBだ。

 自由気ままに魔導二り…バイクを走らせると風が心地よくて気持ちが良い。周りの移り行く景色も見ていると落ち着く。落ち着いていたんだが、後方から大声を出しながら追いかけてくる奴がいる。誰だと思いバイクを止めて、よく見てみるとさっき報告した評議院の者だった。息を切らしながら俺の目の前までやってきた。

「はぁはぁ、ごほっ。……申し訳ないが依頼はまだ達成されてないことが分かりました」

「どういうことだ? 俺は確かにあの魔物を討伐したぞ」

「はい。確かに魔物は討伐されていました。しかし、本部に連絡を取ったところあの魔物は最近発見された魔物らしく基本群れを成しているという情報が分かりました。単体でも強い魔物ですが、街と大森林を僅か一週間で壊滅させたとなると群れでいる可能性が高いのです。あなたが討伐されたのはたまたま群れから離れていた魔物だったのでしょう」

 なるほど。確かに強い奴だったがSS級かと言えばそうでもなかったかもしれない。久しぶりのS級以上のクエストだったから感覚が錆付いていたか。しかしだとしたらあのレベルの奴が複数で襲い掛かってくるというわけか。数にもよるが場合によっては消滅系のDBで一掃するのも手だな。マザーDBか特殊DBのオーバードライブを使うか。

 ただ厄介なのは敵が何匹かに分かれて行動していた場合だ。群れと言っても常に共に行動しているとは限らない。先程戦っていた奴しかりだ。俺が思考の渦に飲み込まれて何分かして、現実に戻ると評議院の者はすでに姿を消していた。考え事をするとすぐ周りが見えなくなるのは俺の悪いクセだな。ただ、とりあえず言えることは

「思ったより時間が掛かりそうだ」

 俺は最近多くなってきた独り言を呟き、来た道を戻っていった。 
 

 
後書き
以下アットノベルス時代のあとがきをそのまま載せます。

さて読者様からの質問に答えようと思います。ルシアくんは何故魔法を使わないのに魔導士ギルドに在籍できるのかという質問でした。確かフェアリーテイルの世界では皆が魔力を持って生まれてくるわけではなかったはずです。むしろ魔力を持っている人は少数です。そもそも魔導士ギルドに入れる条件は何なのでしょうか。原作ではそこについてあまり詳しくは記載されてなかったかと思います。この作品では魔導士ギルドの加入条件は「魔法を使える者」ではなく「魔力を持っている者」としています。ルシアくんは戦闘では魔力はまったく使いませんが、持っていないわけではありません。なので加入が認められたわけです。おわり。
 
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