とあるの世界で何をするのか
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十四話 アイテムとの会談
前書き
PC壊れてたのでかなり時間が掛かってしまいました。
あれから俺は注文をする前に滝壺さんの具合を考慮して、取り敢えず2つ目以降の能力強度を1万に設定しなおした。と言っても、2つ目の能力強度を1万に設定するだけで、1万以上に設定されているそれ以降の能力強度は全て1万になってしまうので、設定すること自体はワンアクションで済むのである。そして、その瞬間に滝壺さんが驚いた表情で俺の事を見ていたので、俺のAIM拡散力場の異常は多少緩和されているのだろう。
「さて、どこで話したらいいかな?」
夕食を済ませてアイテムの面々と一緒に店を出ると、一応麦野さんたちに聞いてみる。まぁ、俺は音響結界を張れるから実はどこでもいいといえばどこでもいいのだが……。しかし、周りから見てしゃべってるのが丸分かりなのに、声が全く聞こえないというのはおかしいだろう。
「人に聞かれたらまずい話って言うなら、ホテルの一室でも使うかにゃーん」
「ここからならホテルグランドディスカバリーが一番近いって訳よ」
「そうですね、アジトまでは超遠いですし」
麦野さんの言葉で、何だかコインロッカー代わりにホテルを使ってた御坂さんを思い出してしまった。ってか、それは漫画版のほうか。まぁ、麦野さんもレベル5だし、暗部の仕事でもお金は入ってくるのだろうから、金銭的なことは考えなくてもいいんだろうなぁ。
「まー、費用をそっちで持ってくれるなら、それでもいいですけど……」
ここでそんな言葉が出てくるのは、やはり俺が貧乏性だからなのだろうか。
「情報を提供してもらおうって言ってるんだから、そのくらいはこっちで出すわよ」
あきれた感じの麦野さんの声を聞いて、いつもこんな感じならいいんだけどなぁ、なんて考えながら歩いていく。4日前には俺のことを殺すって言ってたのに……。
「なに、この高級ホテル……」
到着早々、俺の第一声がこれである。っつか、ほとんどが学生の学園都市にこんなホテル必要あるのか?
「ちょっとチェックインしてくるわ」
俺の様子を気にすることも無く、麦野さんがフロントでチェックインを済ませる。
「お客様、ご案内いたします。こちらへどうぞ」
ホテルのボーイさんに案内されてエレベーターに乗り込む。エレベーターの階数ボタンは30階まで付いているのだが、ボーイさんは28階を押していた。
「こちらのお部屋になります。ごゆっくりどうぞ」
部屋の中まで案内され、ボーイさんはそのまま戻っていった。まぁ、誰も手荷物を持っていないので荷物を置く必要もないし、部屋の案内なども麦野さんが断っていたようで、ホテルの利用方法の説明なんかも全く無かった。まぁ、それはいいのだが……。
「なんでロイヤルスイート!?」
そうなのである。麦野さんがチェックインした部屋は、一泊150万円というロイヤルスイートなのである。
「このくらいの部屋じゃないと隣に聞かれたりするでしょ」
「ま……まぁ、そうかもしれませんけど……」
「結局、麦野にしてみればこれぐらいが普通って訳よ」
隣に聞かれたくないから広い部屋を取ったという麦野さんの言い草に、俺はわざわざその為にこんな部屋を取ったのかと思ったのだが、フレンダの言葉を始めアイテムのほかのメンバーの様子から見ると、これが麦野さんの普通の金銭感覚のようだ。
「それじゃ、早速説明してもらいましょうか」
「それでは……」
俺は用心のために音響結界だけ張っておき、麦野さんたちにあの研究所で流れていた音について話し始めた。といっても、事実を元に俺が多少脚色したものだ。
内容はこんな感じである。―――あの研究所で流れていた音はレベルアッパーと呼ばれるもので、聞くだけで能力が上がるという代物である。俺がレベルアッパーを知っていたのは、レベルアッパーを偶然持っていたから。レベルアッパーを使った人の脳は、AIM拡散力場を利用したネットワークを形成し、他人の脳を使うことで演算処理能力を大幅に上昇させることも出来るが、逆に自分の演算能力も他人に使われることになる。そうすると、常に脳を他人に使われて脳の疲労が激しくなることが考えられるので、このまま放置すると何か脳に異常が出る可能性もある。あと、演算能力が上がるだけだと思うので、能力の基本的な強さは多分変わってないだろう。そして、AIM拡散力場でネットワークが形成されているので、もしかしたらAIM拡散力場がおかしくなったのはそれが原因かもしれない―――
「そんなものがあるのか……」
俺の説明が終わったところで麦野さんがつぶやく。恐らく暗部としての視点で何か考えているのだろう。
「超実感ないです」
「まだレベルアッパー自体がそれほど出回ってませんからね。使用者がもっと増えれば、多少は違いを感じることが出来るかもしれませんけど、元々高レベルだとかなりの人数がレベルアッパーを使用しててもなかなか実感できないかもしれませんね」
絹旗さんの言葉に俺が答える。演算能力が5200万もある絹旗さんが実感できる程度というと、多分1000万ぐらいは上がらないといけないのではないだろうか。そうなると、最終的なレベルアッパー使用者数が1万人になるとしても、一人当たり1000ずつを割り当てなければならないのだ。
「結局、私には意味無いって訳よ」
「大丈夫だよ、私はそんな無能なフレンダを応援してる」
能力的には一番下のフレンダは何故か落ち込んでいて、そこに滝壺さんの毒舌が炸裂している。ホテルまで歩いている間も具合が悪そうだった滝壺さんは、そこそこ回復してきているようだ。
「ん……なんで?」
俺はふと気になってフレンダに聞いてみる。
「私の能力って、私の言ったことは嘘でも本当っぽく聞こえるってだけだから」
「何それ……、その新興宗教の教祖様的な能力は……」
そういえばフレンダの能力って原作では出てきてなかったけど、まさかこんな能力を持っていたとは。あー、でも漫画の超電磁砲ではハッタリかまして御坂さんの能力封じたりしてたよね。でも、話を聞くだけだとどうしても似非教祖様的な能力にしか聞こえないんだけど……。あれ……なんか、とある魔術の禁書目録のほうにはそんな霊装があったような気がするけど違ったかな?
「そっか、それで稼ぐ手があったって訳よ!」
俺の言葉で何か閃いたのか、フレンダが手をポンと叩いて立ち上がった。というか、俺の言葉をそのまま実行する気だろうな。
「いやいやいや、そんなのすぐに詐欺で捕まるわよ。まぁ、それ以前に暗部に始末されるかもしれないけど……」
「げっ……さすがにそれは嫌な訳よ」
俺が注意すると、その場でソファーに座り込む。まぁ、フレンダの浅知恵で似非教祖様をやったところで、暗部が動くとかって全然考えられない。多分、始めて数日でジャッジメントあたりに捕まるのがオチだろう。しかし……何というか、フレンダはこんな感じというのが大体分かった気がする。
「それで、アナタも聞いてるんでしょ。どうするつもりなの?」
俺とフレンダの話が一段落ついたと判断したのだろう、ちょうど良いタイミングで麦野さんが俺に聞いてきた。
「どうするも何も、ウチは基本的な対策を全部終わらせたから、これから特に何かをするつもりなんて無いけど」
「なっ!?」
麦野さんに向かって普通に答えるが、その内容を即座に理解したのであろう麦野さんが驚きの声を上げた。こういうのを目を丸くして驚くというのだろうか、ちょっと麦野さんが可愛く見えてしまった。
「どんなことを超したんですか?」
それほど驚いているようには見えないが、興味津々という感じには見える絹旗さんが聞いてくる。
「んー、取り敢えずは外部からウチの脳にアクセスしたときの制限かな。演算能力の全てを他人に使われたら大変だから、一応10%までに制限をかけてるって感じでね」
「そんなことが超出来るんですか!?」
「それは私たちにも出来るの?」
「やろうと思えば出来ると思うけど……。ウチも脳科学とかAIM拡散力場とかの論文を読みあさって何とか出来たんだから、論文を読みあさってそれが理解できれば、何とかする方法も分かるんじゃないかな」
俺の対応を答えた後に追加で聞いてきた絹旗さんと滝壺さんの疑問にも答える。まぁ、論文が理解できたからといって、更に何とかする方法が分かったからといって、それが出来るかどうかは何とも言えないのである。
「で、アナタはどんな方法をとったの?」
麦野さんが聞いてくる。両肘をテーブルの上に乗せ、両手の掌の上にあごを乗せるという乙女チックな格好ながら、視線や表情などかなりの迫力を伴っている。
「細かいことは論文を探してもらうとして、大雑把に言えば脳のネットワークが出来てるんだから、そのネットワークの中にある管理者みたいなのを探し出してアクセス制限をかける。ってな感じなんだけど」
「その方法を聞いてるんだよ」
麦野さんの体勢こそ変わらないものの、表情の迫力だけが2割り増しぐらいになっている。
「それは感覚的なことだから、説明とか無理だわ。ってか、ほとんどが論文の説明になるわ」
俺は両手の掌を上に向け肩をすくめる。
「そう、ならアナタの読んだ論文は?」
「基本的に脳科学とか大脳生理学関係はほとんど、それからAIM拡散力場関係の論文もかなり読んだかな」
「ふうん、なるほどねー」
俺の説明を聞いた麦野さんは体勢を崩し、ソファーの背もたれに体を預ける。
「その論文、どこにあるかは覚えてるの?」
ファミレスに居た時と比べてかなり顔色のよくなった滝壺さんが聞いてくる。
「んー、基本的には発表されたものばかりだからそれは論文の検索で探せるはずだし、そうでないやつは……暗部の力で何とか……かなぁ」
実際にはアリスの力で何とかしたのだが、多分暗部の力でも何とかできるものばかりだろう。
「ところできりゅう。もしかして、レベルアッパーで他人の能力を使えたりする?」
「いや、それは多分無理だと思う。あとウチ、今は神代姫羅だから」
突然話題を変えた滝壺さんに聞かれて答えるが、一応名前の訂正も入れておく。
「うん、わかった。でも今は……いや今でも、きらから7つのAIM拡散力場が出てるし、ファミレスでその内6つのAIM拡散力場を弱めたよね?」
「あー……」
まぁ、能力強度を落とした時に滝壺さんの反応を見てるから、気付かれているのは知っていたが、黙っていてはくれなかったようだ。
「どういうこと? 滝壺」
滝壺さんの言葉である程度予測は出来ているのだろうが、まだ確証が無いのか麦野さんが聞いた。
「レベルアッパーを聞いた後のむぎのたちのAIM拡散力場は、微妙に別のが混じってる感じになってるんだけど、きらは全く違った7つのAIM拡散力場をだしてる。しかも、ファミレスに居たときにその内6つが弱まった」
麦野さんに促されて滝壺さんが詳しく説明する。まぁ、俺のマルチスキルは完全に気付かれてしまったと思っていいだろう。
「滝壺さんが苦しそうだったし、そこは調整したからね」
ここまで来ると、下手に隠そうとしてもややこしくなるだけだと思うので、俺は普通に答える。
「調整……?」
首をかしげて聞いてくる滝壺さん。凄く可愛いと言っておこう。
「先に言っておくけど、他言無用ね」
最初にそう言って周りを見る。全員が頷いたので俺は話を続けた。
「まず、レベルアッパーの影響だと思うんだけど、ウチは確かに今7つの能力を使うことが出来るわよ」
「なっ!!」
「……え?」
俺としてはかなりの爆弾発言だと思っていたのだが、反応があったのは麦野さんと絹旗さんの二人だけだった。けど滝壺さんは俺から7つのAIM拡散力場を感じていたのだし、そんなに驚くほどのことではなかったのかもしれない。そして、フレンダだが……表情を見る限り、俺の話を信じることができなかったのか、もしくは理解が追いつかなかったようだ。
「それから、これは以前から出来てたことなんだけど、能力の強さをある程度自由に調節することが出来るの。以前、麦野さんたちにウチが体晶を使ってるって言われたことがあったけど、多分それは能力の強さを調節して一時的に上げてたことがあったからだと思う。それで、さっきファミレスで滝壺さんの具合が悪くなったのが、ウチのせいかもしれないと思ったから6つの能力を抑えたの」
俺が話している間、麦野さんと絹旗さんは呆気にとられた表情で、滝壺さんはいつもと変わらず、フレンダは微妙に驚いた表情を見せているものの、頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいそうな感じでもある。
「それは、私達でもレベルアッパーの対策をすれば出来るって事でいいの?」
「さすがにそれは分からないけど、出来るようになる可能性はあると思う」
麦野さんの真剣な質問に答える。その瞬間麦野さんの黒い笑みが浮かんだように見えたが、多分見間違いではないだろう。絶対に有り得ないとされているデュアルスキルが……まぁ、木山先生いわくマルチスキルらしいけど、それが出来るということになれば麦野さんの価値が飛躍的に上がるからだ。まぁ、それもレベルアッパー対策だけでなれるかどうかは微妙なんだけど……。
「それなら、早速アジトに戻って論文を集めるわよ」
「超了解です」
「分かった」
「はーいって訳よ」
アイテムの4人はどうやらこれで帰るようだ。なので俺は音響結界を解除する。
「それじゃ、ウチも帰るわね」
「ちょっと待ちなさい!」
俺が帰ろうとしたところで麦野さんに止められた。
「私達が手を出すなって言われてるのは『神代騎龍』なのよねー。だから、今のあなたなら手を出してもいいって事になるんじゃないかにゃーん?」
「えぇっ!?」
麦野さんの発言に驚く俺。まぁ、予想はしてたんだけど……。
「なんてね、冗談よ。滝壺のことを考えてくれたんだし、重要な情報も貰ったんだからそこまではしないわよ」
いきなり攻撃を仕掛けてこられると危ないので、咄嗟に空間盾を展開しておいたのだが、麦野さんはウインクしながらそんなことを言ってきた。
「あれ……まじで?」
「当然でしょ。それとも何? アナタは私のことをバトルジャンキーか何かと勘違いしてるわけ?」
「いえ、そんなことはないです」
思わず聞き返した俺に詰め寄ってくる麦野さんにこたえる。口には出せないけど、バトルジャンキーは御坂さんで確定のはずだから、その点に関しては心配ご無用です。それ以前に麦野さんの場合、快楽殺人マニアっぽい気がするんだけど……。
「まあいいわ。それじゃ帰りましょ」
麦野さんはそう言ってアイテムのメンバーを引き連れ部屋を出て行った。
「ふー……。まぁ、助かったのか」
麦野さんならやりかねないと思っていたからマジでどうなるか心配だったけど、俺の中での麦野さんのイメージが間違ってるのか、この世界での麦野さんの性格が丸くなってるのか、何とも判断がつかないものの悪くはない傾向だと思う。
そこでふと気になったのが、麦野さん達の能力が使えるようになってはいないか、ということだった。しかし、麦野さん達が帰った状態でこの部屋に居るのも何だか不安だったので、俺は取り敢えずロビーまで移動した。一応、フロントで麦野さんが取った部屋の状態を確認し、俺が出た時点でチェックアウトになるという事だったので、俺が出た事を伝えた。
ロビーの自動販売機で凝縮栄養飲料SURVIVAL+1というスポーツドリンク風のジュースを買うと、あまり人目に付きそうもない奥のほうのソファに腰掛ける。
ジュースのプルタブを引きながら、まずは7つ目の能力強度を5000万に戻しておく。こうすることで、それより上段の能力強度が5000万未満に設定されている場所も、5000万に再設定されるのである。
次に能力名7のところでドロップダウンリストを見てみる。昼過ぎに確認したときにはリストの全てを見たわけではないので、原子崩しや窒素装甲が入っていないか確認する。下の方までスクロールしていくと、一番下から4番目の位置に原子崩しを見つけた。その下は能力追跡となっているので滝壺さんの能力だろう。更にその下が絹旗さんの窒素装甲で、その下には操詐話術という能力が入っているのだが、これがフレンダの能力であろうことは容易に想像できる。
取り敢えず、能力追跡は使えるように能力名2にセットしておく。麦野さんの原子崩しも使えたほうが面白いのかもしれないが、魔法とか色々あるので当面はいいだろう。
3つ目以降の能力もここで設定を見直しておこう。まず3つ目だが、やはり使い道の多い発電能力が妥当だろう。そして4つ目と5つ目には、窒素装甲と反応防御を入れておく。それから6つ目に無光暗視、7つ目には遠距離視を設定してみた。
色々能力名を見ながら設定していたのだが、精神系能力に関しては能力名からどんな能力かを判断することが出来なかったので、ここでの設定はやめておいた。一応、4つ目と5つ目の二つの能力、それから6つ目と7つ目の二つの能力に関しては相乗効果があるのではないかと期待している。
俺はジュースを飲み終わったところで立ち上がり、ジュースの空き缶をゴミ箱に捨ててからホテルを後にした。外はすでに暗くなっており、周囲には誰も居ないので完全下校時刻を過ぎてしまったようだ。
取り敢えず、ジャッジメントやアンチスキルに見つかると面倒なので、レイウイングという魔法を使って空を飛んで帰ろうかと思っていたところで、暗部用のケータイが鳴り始めた。
「はい、もしもし」
『仕事だ』
電話は連絡人からだった。仕事は研究所の破壊で、跡形も無く破壊してほしいということである。
『ホテルの前に車を向かわせているから、そこで待っていろ』
「了解」
まさかこの姿で仕事することになるとはね。
後書き
フレンダの能力に関しては完全に独自設定です。
操作話術ではなく操詐話術です。『作』→『詐』
一応原作とWikiで見たんですけど、フレンダの能力に関しては特に出てこなかったので、勝手に作らせて貰いました。
ページ上へ戻る