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髑髏天使

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第五十話 帰郷その十九


「その小匙をだな」
「うむ、少しずつな」
「大きくしておくか」
「そうじゃ。そうするのじゃ」
 こう話すのであった。
「確かに知らないことはあまりにも多いがのう」
「思えばな」
 牧村もここでこう話す。
「俺も最初は何も知らなかったな」
「わしもじゃ」
「しかし少しずつ知っていったな」
「そうじゃな。思えばそうじゃな」
 また言う博士であった。
「最初は本当に何も知らなかった」
「髑髏天使についてな」
「探せば色々な文献があった」
 それも様々な国にである。それがあったのである。
「縄文字や象形文字を解読する必要もあったがのう」
「楔形文字もあったな」
「甲骨文字にしてもな」
「そうしたものを全て解読できるか」
「うむ、できる」
 博士の特殊技能の一つである。
「解読できるようになるには苦労したがのう」
「っていうかさ。そうした文字ってさ」
 ここでまた妖怪達が話すのだった。
「普通の人って一つの文字に必死になってるけれど」
「博士って幾つもだからね」
「物凄い数の文字解読できるよね」
「そうだよね。それって凄くない?」
「かなりね」
「そういえば喋ったり書ける言葉だって」
 現代の言語についてもであった。
「二十ヶ国語は喋れるよね」
「四十じゃなかったっけ」
「とにかく多いよね」
「そっちもね」
「言語は昔から得意じゃ」
 博士にとってはそれで済むことであった。
「それに一度覚えたことは忘れんのじゃ」
「そうそう。一度見たり聞いたらね」
「博士って絶対に忘れないよね」
「知識もどれだけでも入るし」
 それが博士の頭脳であった。
「記憶力が桁外れっていうかね」
「そっちが凄いから今こうしてるんだね」
「まあそうじゃな」
 博士もそのことを認めるのだった。
「記憶力と長生きには感謝しておるぞ」
「どちらも桁外れだな」
「そうそう、博士のそういったことってね」
「もう普通じゃないから」
「人間離れしてるから」
 また妖怪達が楽しそうに話していく。
「そうしたところってやっぱり」
「僕達に似てるかな」
「似てるっていうか同化してきてる?」
「あっ、それ言えるかもね」
「確かにね」
「前にもそんな話をしておったのう」
 このことを覚えていた博士だった。
「そういえばのう」
「だよねえ。けれど実際じゃない?」
「実際に僕達と博士って似てきてるよね」
「能力だけでなく性格も」
「どっちもね」
「博士、そういえばですけれど」
 ろく子の首は今度は博士の方に伸びてきていた。
「今お歳は」
「さて」
 首を傾げさせながらの返答であった。
「幾つだったかのう」
「おわかりになられませんか」
「百十歳は超えておる」
 それだけはあるというのだ。
「子供の頃じゃったかのう。日露戦争を見たのは」
「懐かしい戦争だよね」
「そうだよね」
 妖怪達もこんなことを話す。 
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