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髑髏天使

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第五十話 帰郷その一


                   髑髏天使
                 第五十話  帰郷
「そうか、もうか」
「神戸に帰るのね」
「そうだ」
 牧村は屋敷の居間でだ。こう祖父母に話していた。
 畳が敷かれ祖父母の後ろの草色の壁には掛け軸がある。そして襖には水墨画が描かれている。その部屋の中で二人に話すのであった。
「今まで有り難う」
「何、いいことだ」
「楽しんでくれたわよね」
「ああ」
 祖母の言葉に対して頷くのだった。
「充分にな」
「それはいいがだ」
 ここで祖父は苦笑いと共に言ってきた。
「しかしだ」
「しかし」
「無愛想なのは変わらなかったな」
 こう孫に言うのだった。
「その喋り方もな」
「礼儀がなっていないか」
「言葉を文字にするとな」
 その場合はというのだった。
「しかしその中にだ」
「入っているか」
「だからいい」
 これが祖父の言葉だった。
「それはな」
「だといいがな」
「それでだが」
 祖父の言葉は続く。
「神戸に戻ってもだ」
「その時はか」
「そうだ。もう剣道はしないか」
「おそらくな」
 そうだというのだった。それを否定しないのだった。
「フェシングとテニスに専念する」
「わかった。それではな」
「座禅はする」
 孫はこうも言った。
「それはだ」
「それは何よりだ」
 祖父は孫の言葉を聞いてまた笑顔になった。
「座禅は心のものだからな」
「俺はそれまで心の鍛錬はしていなかったか」
「いや、していた」
「それはしていたよ」
 祖父だけでなく祖母も話してきた。
「それはだ」
「ちゃんとね」
「していたか」
 牧村は祖父母の言葉に意外な顔になった。そうしてそのうえで言うのだった。
「だといいのだが」
「スポーツがそれだ」
「それでしていたよ」
 そうだというのである。
「だからだ」
「そこまで気に病むことはないよ」
「スポーツもまた心の鍛錬になるか」
「知っていたと思うが」
「違ったのかい?」
「知ってはいた」
 これは事実だ。彼もそれは知っていたのだ。しかしであった。
「だが大きいものだとは思っていなかった」
「そうだったのか」
「そこは違うよ」
「違う」
 牧村は祖母の今の言葉に顔を向けた。
「そこは違うのか」
「そうだよ。スポーツも心の持ち方次第でね」
 どうなるのか。祖母は話していくのだった。 
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