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髑髏天使

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第七話 九階その五


「だからね。やっぱり」
「そう簡単にわかりはしないということか」
「そういうこと。わかってもらえたかな」
「それならな」
 こう言われるとわかった牧村だった。
「わからないからこそ秘術か」
「わからないようにしているからね」
「そういうことか。しかし」
 だがここ牧村はまた言った。
「この数字の配列は」
「これだよね」
「そうだ。これに何かあるな」
「それは間違いないって言われているね」
 これはまだ察しがつくものであったのだ。
「けれどね。わかるのは本当に」
「僅かか」
「どうしてもね。それはね」
「そうか」
「何かよ」
 今度は金髪が眼鏡に言ってきた。
「俺にも全然わからねえけれどよ」
「だからわからなくて当然なんだけれど」
 眼鏡は今度は金髪に対して言った。
「秘術なんだから」
「そういうことかよ」
「うん。けれどね」
「けれど?」
「わかる人間にはわかるんだよ、これって」
「わかる奴にはかよ」
 また言う金髪だった。
「何か特別な奴だけわかるみたいな言葉だな」
「少なくともヘブライ語を理解しないと駄目なんだよ」
「ヘブライ語!?」
 金髪はヘブライ語と聞いてまた顔を顰めさせた。
「ヘブライってユダヤだよな」
「そうだよ」
「じゃあユダヤ人の言葉かよ」
「そういうこと。古代ユダヤ人の言葉だよ」
「古代って何なんだよ」
 金髪にとってはさらにわからない話だった。
「何千年前の話って何なんだよ」
「それでも文字は残ってるからね」
「残ってる?ああ、そうか」
 金髪もここでわかったことがあった。
「あれだったよな。ユダヤ人ってよ」
「そうだよ。自分達の文化守るのに厳しいからね」
「そういうこと。だからね」
「わかるのか」
「わかるにしろ何か話が無茶苦茶になってきたな」
「秘術らしくていいじゃない」
 眼鏡の言葉は心なしかうきうきとした感じになっていた。
「それだけ歴史があるなんてさ」
「そういうものか?」
「そうだよ、それにさ」
「ああ」
「わかりそうな人もいることだし」
「いるのかよ」
 金髪にとってはまた訳のわからないことになってきていた。
「これがよ」
「古代ヘブライ語がわかる」
 これが絶対必要条件である。
「それとユダヤ人についてもよく知っている」
「待て」
 ここで牧村が眼鏡に言ってきた。
「ユダヤ人か」
「うん」
「確かにこの学校には外国からの教授や講師、研究者、留学生も多い」
「そうだね」
「しかしだ」
 さらに眼鏡に対して言ってきた。
「ユダヤ人はいたか」
 真剣な目で眼鏡に問う。
「ユダヤ人は。いたか」
「ユダヤ人ってまずイスラエルだよな」
 金髪がまた言ってきた。
「それと?ヨーロッパ各地にいて」
「アメリカに一番多かったな」
 牧村は今は金髪に話を合わせた。
「確かな」
「ああ、アメリカに確か」
 どうやら彼は国際情勢に詳しいらしい。その金髪に手を当てながら述べる。 
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