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髑髏天使

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第四十九話 停戦その九


「美味しいものをね」
「貴様は食べられるのか」
「そうだよ。何かおかしいかな」
「どうして食べるのだ」
 牧村は真剣な声で問うていた。
「その身体で」
「だから。僕のこの目でね」
「それは口にもなるのか」
「そういうこと。味覚を味わうこともできるよ」
「随分変わった食べ方だな。いや」
「いや?」
「変わっているどころではないか」
 牧村は言い換えた。そうしてそのうえでこう言ったのだった。
「はじめて聞く食べ方だ」
「まあそうだろうね。こんな食べ方をするのはね」
「貴様だけか」
「口ないからね」
 見れば本当にない。それは誰が見ても言えることだった。
「目で食べるの」
「噛むことはしないな」
「うん、吸収するんだ」
 そうするというのだった。やはりかなり特異な食べ方である。それは誰が見ても、牧村が見てもそう言うしかないものだった。
 そしてだった。ここでまた言う死神だった。
「それではだ」
「何だ」
「堺にはこのまま行くのだな」
「そうだ、バイクでな」
「わかった。では海の上を走りか」
「道を進むより早い」
 信号があるかないか、そして道路があるかないかという問題だった。
「だからだ」
「そういうことだな。しかし」
「しかしか」
「水の上進めるということは便利だ」
 二人はそのまま海の上を進んでいる。サイドカーもハーレーも陸上、しかも舗装されたアスファルトの上を進むのと全く同じ速さだった。
 その速さで進んでであった。彼等は話をしていた。
「空も飛べるのだからな」
「空か」
「そのサイドカーもだな」
「如何にも。飛べる」
 戦いの中で何度も飛んでいる。そうしているのだ。
「それができるが」
「私のハーレーもだ」
「そうだったな。飛べるからな」
「では飛ぶか」
「その方が早いな」
「そういうことだな。それではだ」
 こうしてだった。二人はそれぞれのバイクを飛ばしたのだった。
 堺まで来たのは瞬く間であった。二人は堺の港の一つに降り立ちそのうえで道に出て進む。そしてそこでまた話をするのだった。
「そしてだな」
「何処に行くかだ、堺のな」
「だから食べようよ」
 ここでまた目玉が出て来て言う。
「何がいい?食べるのは」
「堺の名物といえばだ」
 死神が言った。
「すっぽんか」
「それにする?」
「金はある」
 死神はまた言った。
「それではな」
「よし、それじゃあね」
 目玉も明るい声で死神のその言葉に頷いた。そうしてだった。
 二人でだ。牧村に対して問うのだった。
「それでいいか」
「すっぽんで」
「それか」
「食べたことはあるか」
「どうなの?」
「あることはある」
 牧村の返答はこうだった。
「そして好きだ」
「ならいいな」
「そうだね」
「しかしだ」
 二人はそれで納得したが牧村はまた言ってきた。
「それを今食べるか」
「そうだよ」
「思い立てばだが」
「そうか。すっぽんはそうそう食うものではないが」
「そうなのか」
「そうだったんだ」
 二人の返事はこうだった。
「それはな」
「はじめて知ったね」
「知らなかったのか」
 牧村は二人の言葉を聞いてこう返した。 
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