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髑髏天使

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第四十九話 停戦その八


 海の上を走る牧村のサイドカーを見てだ。死神は言うのだった。
「貴様のものか」
「そうだ、こうしてだ」
「海の上を進めるのだな」
「このサイドカーは特別だ」
 そうだというのである。
「博士がだ。改良したこのバイクならばだ」
「海の上も空もだな」
「全て行ける。だがそれはだ」
「私のこのバイクもか」
「同じではないのか」
「否定はしない」
 こう返す死神だった。
「ただこれはだ」
「これはか」
「そうだ、私のバイクは神の手で作られた」
 それが彼が今乗っているハーレーだというのである。
「とはいっても私の力によってではない」
「僕でもないよ」
 目玉もまた言ってきた。
「私にはその技術はない」
「残念だけれどね」
「では他の神がだな」
「その通りだ。それはだ」
「技術の神が造ってくれたんだ」
 これが彼等の話だった。そうだというのである。
「神にもそれぞれの力がある」
「司るものがあるからね」
「死神が司るものは」
「死だ」
 そのものずばりであった。死神は一言で言い切ってみせた。
「そして今は戦いも司っている」
「しかし技術はないか」
「そういうことだ。実は大鎌にしてもだ」
「その技術神が造ってくれたんだ」
 こう二人で牧村に話す。
「そういうことだ」
「これでわかってくれたかな」
「話はわかった。そうか、神もまたか」
「それぞれ得手不得手がある」
「そういうことなんだ」
「色々と事情があるのだな」
「神は万能の存在ではない」
 死神の言葉だ。
「一つ一つ司るものについては意のままだが」
「全知全能じゃないんだ」
「全知全能の神か」
「それはあくまであの神だけだ」
「僕達とは違う神だよ」
「あの神は特別か」
 牧村もその神が何なのかわかった。あの砂漠の神である。
「あれだけは」
「あの神はあの神だけで成り立っている」
「そういう世界だからね」
「我が国では今一つ馴染がないがな」
「そうだろうな。この国はな」
「これだけ多くの神で成り立ってる国はないからね」
 二人は日本についてはこう述べた。そうした国だというのである。
「知られはしても根付きはしない」
「この国ではそうだね」
「そういうことか」
「そうだ。それではだ」
 死神はその造られたハーレーに乗りながらその右手に大鎌を出してだ。そのうえでだった。
 前を一閃する。それで終わりだった。
「これでよし」
「仕事は終わったか」
「これで終わりだ」
 返事は素っ気無くさえあった。
「これで完全にな」
「早いものだな」
「まつろわぬ魂を冥府に送っただけだ。それではだ」
「早いのも当然か」
「そういうことだ」
 やはり素っ気無い死神だった。
「仕事は早くだ」
「そしてそれからはか」
「ゆっくりと楽しませてもらう」
「では堺にだな」
「行くとしよう」
「さて、それじゃあね」
 目玉も出て来て言う。
「何を食べようかな」
「食べるだと」
「うん、食べるんだよ」
 目玉は牧村の問いにも答えた。 
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