髑髏天使
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十七話 神々その十六
「どちらが先に我に倒される」
「生憎だがそのつもりはない」
牧村が神の言葉に返した。
「倒されるのは貴様だ」
「神である我がだというのか」
「そうだ」
こう言うのである。
「俺ではない」
「無論私でもない」
死神も言ってみせる。
「ここで貴様を倒す」
「神であろうともだ」
「言うものだな」
海神はそれを聞いても動じない。怒りすら見せない。
二人を見下ろしてだ。そのうえで男に問うのであった。
「ナイアーラトホテップよ」
「楽しむというのだな」
「いいな、それで」
「その為に封印を解いた」
だからだというのである。
「それは言っておく」
「そうか」
「楽しむといい」
実際にだ。男はこう同胞に告げた。
「思う存分な」
「ではそうさせてもらうぞ」
「好きなだけそうするのだな。それではだ」
「去るか」
「また見させてもらう」
やはりこう言うだけだった。男はここでも姿を消すのだった。
そしてだった。行く先はだ。
「混沌の中に戻るか」
「今はな」
こう告げてだ。彼は消えたのだった。そして後に残った神はだ。
二人に顔を向けてだ。あらためて言ってみせる。
「それではだが」
「来るか」
「戦いだな」
「如何にも」
まずはこうしたやり取りからだった。
「貴様等は我が倒す」
「今までその言葉は幾度も聞いた」
死神が彼に返す。
「しかしその都度だ」
「倒してきたというのか」
「如何にも」
こう告げるのである。
「それは言っておく」
「言葉は聞いた」
神も負けてはいない。
「だが。しかしだ」
「貴様も同じことを言うのだな」
「そういうことだ」
「では、だ」
死神はだ。ここで構えを変えた。そうしてだった。
右手を拳にする。そのうえでまた言うのであった。
「最早お喋りは不要だな」
「はじめるとしよう」
「いいだろう」
「では、だ」
そしてだ。牧村もだった。
彼は両手を拳にした。それを己の胸の前にやる。
死神も同じ動きを右手だけでしてだ。二つの光が起こった。
髑髏天使が右手を少し前に出してその右手を握り締める。死神が右手に持っているその大鎌を前で一閃させた。それが合図になった。
「行くぞ」
「はじめさせてもらう」
「その最大の力を見せるのだ」
神はその二人を見下ろしながら告げた。
「我にだ」
「言われずともだ」
「そうさせてもらう」
これが二人の返答であった。そうしてだ。
それぞれ姿を変えた。髑髏天使は黄金の姿になり死神は漆黒のそれになりだ。そのうえで宙を駆り神に対して向かうのであった。
まずはだ。死神がだ。分身をはじめた。
「行くぞ」
「分け身か」
「この術のことは知っているか」
「一応はな」
こう返す神だった。
「知ってはいる」
「そうか」
「どうやらその分け身の数も増えているな」
「私とてただいるだけではない」
死神は気付けば十人になっていた。そのそれぞれの口からの言葉だった。
ページ上へ戻る