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髑髏天使

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第四十七話 神々その六


「俺は生きる」
「さっきも言ったのう」
「生きるが卑怯なことはしない」
「戦いの中にあってもじゃな」
「それをすればだ」
 ここでだ。こんなことも話すのだった。
「死ぬ気がする」
「死ぬというのじゃな」
「そんな気がする。何故かわからないがな」
「ああ、それはわかるぞ」
 博士は牧村の今の言葉にすぐに答えてきた。
「それはのう。わかるぞ」
「わかるか」
「うむ、わかる」
 また言う博士だった。
「よくな。つまりはじゃ」
「つまり、か」
「あれじゃよ。その場合の死ぬとはじゃ」
 その場合はとは。博士は話すのだった。
「君の心が死ぬということじゃ」
「俺の心がか」
「この場合心は誇りじゃ」
 それだというのである。
「そういうことなのじゃ」
「そうなのか」
「左様、君の心が死ぬ」
 博士はまた話した。
「そういうことじゃ」
「卑怯なことをすればか」
「誇りはあるな」
 今は牧村の目を見ていた。そのうえでの問いだった。
「君には」
「ないと言えばどう思う」
「嘘じゃと思う」
 これが返答だった。
「確実に。嘘じゃと思うぞ」
「そういうことか」
「少なくとも信じられん」
 博士はまたこう話した。
「君を見ていればじゃ」
「そうなのか」
「君は髑髏天使であることに誇りを持っているな」
「如何にも」
 そしてだった。彼はここでそのことを認めてみせた。
 そのうえでだ。こうも言うのだった。
「その通りだ」
「そういうことじゃ。人は誇りがある」
 また言うのだった。
「特に君は髑髏天使として、戦う者として」
「それ故に誇りがか」
「あるということじゃよ」
「だから俺は卑怯にはか」
「抵抗があるのじゃよ」
 そしてだった。博士はこんなことも行ってみせたのだった。
 牧村はだ。こう話した。
「俺が知っている人間にはだ」
「うむ」
「中には平然と卑劣なことをしている者もいるな」
「確かに多いのう」
 博士もそうした人間は知っていた。世の中にある通りだ。
「そうした人間は」
「そうだな。確かにな」
「そうした人間に誇りはないのだな」
「うむ、ない」
 断言した博士だった。
「誇りは恥でもある」
「恥か」
「恥を知るということじゃ」
 それだというのである。
「そして恥を知らぬ者はじゃ。何処までも卑劣になる」
「そういうことか」
「恥を恥と思わなくなった時」
 博士の言葉は続く。格言めいたものになっていた。 
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