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髑髏天使

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第四十五話 新生その十八


「その通りだ」
「ではそのことを今から確かなものにしよう」
 死神を見ての言葉だった。
「この俺の手でだ」
「ではだ」
 死神の方が先に動いた。分身はそのままだ。
 そうしてだ。風の様に動き妖魔を取り囲んだ。
「何時の間にだ」
「確かにな。強くなった」
「そうだな」
「その通りだ」
 また死神達が言う。
「この速さ、今までなかった」
「これまで以上にだ」
「速くなった」
「力を得ただけではない」
 こうそれぞれ言ってであった。そうして。
 取り囲んですぐにであった。攻撃を仕掛けたのであった。
「では、だ」
「やらせてもらう」
「これでだ」
「何っ、身体が」
 妖魔は攻撃を逃れる為に上に飛ぼうとした。しかしであった。
「動かないというのか」
「結界を張った」
「そうさせてもらった」
 また死神達が言ってきた。
「それによって貴様の動きを止めてだ」
「そうしてだ」
「攻めるというのか」
 次に何が起こるのか、妖魔はもうわかった。
「そういうことか」
「そうだ。それではだ」
「滅する」
 こう言った。そしてであった。
 それぞれの手にあるものを放ったのであった。投げた鎌に込めて。
 その鎌達がだ。さらにそれぞれ幾つかに分かれ複雑な動きを示しつつ妖魔を襲った。その数は如何に妖魔とてかわしきれるものではなかった。
 鎌の一つが妖魔を突き刺しだ。それが勝負を決めた。その突き刺さった己の鎌を見てだ。死神はにこりともせずこう言ったのだった。
「私の勝ちだな」
「そうだ」
 妖魔も言葉を返してきた。
「貴様は確かに勝った」
「そして貴様はだ」
「滅びるな。まさかこの俺が」
「死の力だけではわからなかった」
 ここでこう言う死神だった。
「だが今の私にはだ」
「秩序もだな」
「その力もある。それが大きかった」
 このことに今の強さの原因を求めて話す。
「やはりな」
「それでなのだな」
「そういうことだ。そしてだ」
「今度は何だ」
「貴様等は何なのだ」
 妖魔に妖魔のことを問うたのだった。
「貴様等の神は。何なのだ」
「神か」
「そうだ、あの男」
 あの黒い男のこともここで話した。
「ナイアーラトホテップといったな」
「あの方もまた神であられる」
「あの男もか」
「そうだ、我等を導き解き放たれる神だ」
 そうだというのだった。
「それがあのナイアーラトホテップ様なのだ」
「そうなのか」
「俺が言うことはこれだけだ」
「言わないというのか」
「後はあの方に聞くのだな」
 妖魔は赤い炎に包まれながら素っ気無く述べた。
「そうするのだな」
「あの男に直接か」
「俺は言うつもりはない」
 やはり素っ気無い言葉であった。
「ではな。俺はこれで去るとしよう」
「死ぬか」
「そうさせてもらう。それではだ」
 最後にこう言ってであった。妖魔は赤い炎に包まれそのうえで消えた。後に残った死神、そして髑髏天使は地上に降り立ちそれから元の姿に戻った。そうしてであった。
 牧村がだ。死神に対して言ったのだった。
「今の力がか」
「私の新たな力だな」
「秩序の力だな」
「そう、そしてそれはだ」
「混沌を消し去る力か」
「私の場合は刈ると言った方がいいか」
 死神はここでこの表現を使ってみせた。
「むしろな」
「刈る、か」
「私の鎌は命を刈るものだな」
「そうだな。確かにな」
「だからだ」
 また言う死神だった。
「刈る。そうなるな」
「だからか」
「そういうことだ。さて」
 ここまで話してであった。死神はこんなことを言ってきたのであった。
「私の呼び名だが」
「秩序の力も手に入れたな」
「だが。死の力も備わっている」
 これは最初からだった。このことにも言及してみせたのだ。
「だからだ。呼び名はこのままでいい」
「死神でか」
「そうだ、それでいい」
 こう牧村に話すのだった。
「それでな」
「そうか。それではだ」
「死神と。今まで通り呼んでくれるな」
「そうさせてもらう」
 牧村は彼のその言葉を受けた。そのうえでの言葉だった。
「では死神よ」
「うむ」
「また会おう」
 牧村は実際にその呼び名で呼んでみせた。
「次の戦いの時にだ」
「そうだな。それでは今はだ」
「元の世界に帰るか」
「私の元の世界にな」
 まさにそこにだというのであった。
「そして休むとしよう」
「そうするか」
「そして次の戦いにはだ」 
 戦いのことにもだ。言及したのだった。
「貴様の力も見せてもらおう」
「俺の力は既に見せているが」
「いや、まだ全てではない」
「全てではか」
「最高位の天使の力はその程度ではない」
「ではまだ隠された力があるのだな」
「そうだ、まだある」
 彼はまた言った。
「だからだ。見せてもらう」
「そうか。ならばだ」
「見せてもらえるな」
「その時が来ればな」
 こう返した牧村だった。
「ではな」
「そうか、わかった」
「ではまた会おう」
 彼はサイドカーに乗った。そうして実際に帰るのだった。
 それでこの話は終わった。だがそれはまた次の戦いへの休息に過ぎなかった。そのあらたな戦いはだ。既にはじまっているとも言えた。


第四十五話   完


                2010・10・8 
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