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髑髏天使

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第四十五話 新生その十一


「よいな」
「わかった。そうさせてもらう」
「とにかく食べないと駄目じゃ」
 博士の今度の言葉は強調だった。
「それが全てのはじまりじゃ」
「そういうことだな。ではだ」
「うむ」
「もう一枚もらおう」
 こう来た。
「もう一枚な」
「食べるのか」
「それとサイダーも貰おうか」
「炭酸飲料はいけるのじゃな」
「コーラも好きだ」
 そちらもだというのだった。
「酒以外ならいける」
「そういえばそうじゃったな、君は」
「では博士の分も頼むぞ」
「うむ、頼む」
 笑顔で応える博士だった。
「お好み焼きにはやはりじゃ」
「サイダーか」
「若しくはコーラじゃな」
 博士もそれは同じであった。
「ビールもよいがのう」
「ビールか。ではよかったら」
「いや、今はいい」
 それは断るのだった。
「遠慮しておく」
「そうなのか」
「昼から飲むのも何じゃ」
 まずはそれを理由にした。
「それにじゃ」
「それに?」
「まだ研究することがある」
 これも理由であった。
「だからじゃ。止めておく」
「研究を優先させるか」
「飲んでまともな研究はできん」
 博士はきっぱりと言い切った。
「少なくともわしはじゃ」
「その辺りはドイツ人やイタリア人とは違うか」
「朝からビールやワインをごくごく飲めたら違うのじゃろうが」
 その場合はというのである。
「しかしわしはそれは無理じゃからな」
「ドイツやイタリアに行ったことはあったのか」
「何回かな。それぞれあった」
 そうだったというのである。
「しかし。その時も飲むのは夜にじゃ」
「朝や昼にはか」
「飲まなかった」
 そうだったというのである。
「決してな」
「成程な。研究に差し支えるからだな」
「その通りじゃ」
 こんな話をしながらお好み焼きを食べる二人だった。牧村はそれを食べ終えて博士と別れてまたトレーニングを開始した。その日はそれで終わった。
 だが次の日だ。不意に目覚めるとだ。
 まだ四時だった。暗い。しかしである。
 胸騒ぎがしてだ。着替えて外に出た。するとであった。
 屋敷の外にであった。男がいた。朝がはじまろうとする世界の中でだ。漆黒の姿をそこに見せて悠然と立っていたのである。彼の前に。
 そのうえでだ。静かに口を開いてこう言ってきた。
「はじめるとするか」
「断るカードはないな」
「貴様は最初からそれを持っているのか?」
「いや、持ってはいない」
 これが牧村の返答だった。
「俺もな」
「そういうことだ。それではだ」
「場所は何処だ」
 牧村が問うたのはそれについてだった。
「一体何処だ」
「今度はこちらの世界だ」
「そうか、そこか」
「ついて来るがいい」
 こう牧村に言ってだった。踵を返したのだった。 
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