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髑髏天使

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第四十四話 妖虫その十一


「そういうことで宜しくね」
「全く。御前という奴は」
「けれどどう?アイスキャンデーは」
 妹は強引に話を元に戻してきた。
「悪い考えじゃないでしょ」
「そうだな。それはな」
 兄も認めることは認める。
「店の外で売るにはいいな」
「商売は基本だしね」
 これはよく言われていることである。
「そういうことだから」
「わかった。それではだ」
「ええ」
「それも考えてみる」
 受け入れるということだった。
「マジックに入ったその時にな」
「そうしてね。それでだけれど」
「ああ」
「このアイスバニラだけなの?」
 アイスの話にも戻った。未久が戻したのである。
「どうなの?それは」
「いや、他も作っていく」
「そう、やっぱりね」
「チョコレートもだ」
「それもなのね」
「ストロベリーもブルーハワイもだ。作っていく」 
 この考えを妹に話す。
「そうしていく」
「そうするといいわ。バニラだけじゃ寂しいからね」
「ただな」
「ただ?」
「アイスクリームも奥が深いな」
 今度するのはこうしたことだった。
「実にな」
「難しいの?」
「難しい。そうした意味で奥が深い」
 そうだというのだ。
「これだけで店が成り立つのもわかる」
「作ってはじめてわかったのね」
「そうだな。それまではそこまでわからなかった」
「ケーキにクレープもよね」
「どの菓子も奥が深い」
 牧村はどの菓子も軽く見てはいなかった。むしろである。作ってみてである。そこからその深さがわかってきたのである。そういうことだった。
「それもかなりな」
「そうなの」
「それでだ」
「ええ」
「アイスは作っていく」
 このことは断言した。
「しかしだ」
「しかし?」
「それはやはり喫茶店のアイスだ」
「喫茶店のなの」
「お茶やコーヒーと一緒に出すアイスだ」
 そうしたアイスだというのである。
「アイスだけで売るものじゃない」
「ふうん、アイスクリーム屋さんのアイスと喫茶店のアイスって違うのね」
「違う、アイスクリーム屋のアイスはそれだけを食べるものだが」
「けれど喫茶店はね」
「お茶がある。若しくはコーヒーだ」
「そうしたバランスも考えてなのね」
「それで作っていく」
 これが彼のアイスへの考えだった。
「他の菓子もだ」
「わかったわ。それじゃあね」
「ああ」
「そうしたアイスをまた作って」
 実にちゃっかりとした妹の言葉だった。
「御願いね、お兄ちゃん」
「わかった、それではこれからもな」
「私高校入ったらそっちのお店行かせてもらうし」
「勝手に決めているのか」
「違うわ。マスターと奥さんにも言われてるのよ」
「マスターと奥さんにか」
「そうなの、もうね」
 実に楽しげに兄に話す。 
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