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髑髏天使

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第四十四話 妖虫その二


「他の書もあるがじゃ」
「他にもあるのか」
「あることはあるが同じじゃ」
 博士はまた話した。
「やはりな、読んでいくと発狂しかねん」
「随分と厄介な書ばかりなのだな」
「それが妖魔に関する書じゃ」
 博士はこう話す。
「だから解読は少し待ってくれ」
「わかった。俺は読めない」
「まあそれは仕方ないよ」
「それはね」
 妖怪達は牧村のフォローに出た。
「ええと、アラビア語?」
「そんなの日本人で読める人ってね」
「そうそう、そうはいないし」
「まして発狂した人が書いた文字なんてどんなものか」
「うむ、文字の解読自体が非常に厄介でのう」
 博士もそのことについて述べてきた。
「そちらも困難じゃ」
「博士って古文書の解読の専門でもあるのに?」
「それでもなんだ」
「そうじゃ。難しい」
 また話す博士だった。
「ここまで難しい書ははじめてじゃ」
「そこまでなんだね」
「厄介な話だよね」
「全くだよ」
 妖怪達も言う。
「僕達も妖魔についての知識はないしね」
「というかどんな連中かね」
「ううん、全然知らなかったし」
「日本ってそれ考えたら平和だったね」
 こんな話もする。
「そんな連中いなかったしね」
「そうそう」
「平和だったよね」
「魔物は髑髏天使と戦うだけだったしね」
「そうだな。思えばだ」
 その髑髏天使である牧村も話す。
「魔物との戦いは戦いだけに専念できた」
「けれど妖魔は違うよね」
「何かが」
「魔物になる恐れよりも恐ろしいものを感じる」
 こう妖怪達に述べる。
「不気味なものがな」
「不気味なもの、確かに」
「混沌だしな」
「何が何だかわからないっていうのが」
「怖いよね」
「わからないか」
 牧村も彼等のその言葉に反応して述べた。
「そうだな。奴等のことはほぼ何もわからない」
「これは魔物や天使についてもじゃがな」
 博士はここでこんなことを言った。
「君のその髑髏天使についてもじゃ」
「わかることは少ないか」
「しかし。大きく違うことがある」
 博士はこう指摘した。
「それはじゃ」
「それは。何だ」
「混沌じゃな。これまでのことはただわかっていないだけじゃった」
 博士の指摘はこうしたことだった。
「しかしじゃ。今度の妖魔達はじゃ」
「それは混沌の中にあるか」
「わからないことが混沌の中にあるのじゃ」
 そうだというのである。
「その得体の知れないものの中にじゃ」
「何かさ。その混沌がね」
「そうだよね。そのわかっていないことを罠にしてね」
「牙を剥いてくるみたいな」
「近寄ったらね」
「そうしてきそうでね」
「だから怖いんだよ」
 妖怪達もこう話す。 
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