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髑髏天使

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第四十三話 熾天その四


「本当にね」
「戦後か」
「学校の先生の質は落ちたよ」
 また言う祖母だった。
「本当に」
「その教師と会った」
 祖父も言う。
「人間として最低だった」
「最低だったか」
「下劣で粗暴な人間だった」
「まさに教師の鑑か」
「戦後の教師のな。わしはその教師と剣を以て対した」
「それでどうした」
 答えはわかっていた。だがそれでも問う牧村だった。
「その教師を」
「一撃で終わらせた。そしてその行動を教育委員会等に告発して懲戒免職にしてやった」
「いいことだな」
「そう思っている」
「そうだな。おかしな教師はいてはならない」
 牧村もこう確信しているのだった。
「絶対にだ」
「被害を被るのは子供や生徒だ」
「だからね」
 祖父母も話す。
「許してはおけなかった」
「お爺さんも徹底的にやったよ」
「いいことだ」
 牧村はまた頷いてみせた。
「それでな。それでその教師は」
「剣道連盟から追放されて教師も首になった」
「そうなったよ」
「そうか。それは何よりだ」
 牧村もそれでいいとした。
「それでな」
「そうだ。有害な教師はいてはならない」
「本当にあの戦争の後おかしくなったよ」
「戦前と戦後で教師は全く違う」
 牧村も強い声で言った。
「質も思想もか」
「これでは戦争前の方がいい」
「そうだよね。どうにかしないと駄目だよね」
「日教組か」
 牧村は言った。
「最大のガンは」
「そうなるな。日教組が一番の問題だ」
「あの組織がだよね」
「あそこをどうにかしなければ」
「あんな先生がまた出て来るよ」
 こう話していく祖父母だった。そうしてだ。
「未久からも聞いた」
「あんたの中学校にもいたんだね、そんな先生が」
「いた。一人な」
 こう答える孫だった。
「しかし今はもういない」
「死んだか」
「それとも転勤?」
「死んだ。誰も悲しまなかった」
 牧村は一言で事実を話してみせた。
「誰もな」
「そうか、誰もか」
「誰もなのね」
「むしろ喜ばれていた。暴力だけで知性も教養も何もなかった」
 そうした教師が大手を振って歩いているのが今の日本である。それで教育がよくなる筈がない。腐敗して当然のことであった。
「爺ちゃんが成敗した奴と同じだ」
「全く同じみたいじゃな」
「本当にね」
「そうだな。そうした教師は何処にもいるか」
 このことを今よく噛み締める牧村だった。
「それでその子はどうなった」
「今はうちの道場で剣道をしている」
「もう初段になったのよ」
 祖父母がその子供のことを話した。
「中学生だ、これからどんどん伸びるぞ」
「剣道だけでなく人間もね」
「そうか」
 それを聞いてだった。少し安心した顔になる彼だった。 
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