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髑髏天使

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第四十二話 共闘その二十


「何もな」
「思うところはないか」
「力を得てそれで喜ぶようなことはない」
 実に牧村らしい言葉だった。それを隠すこともしない。
「むしろそれに溺れることを怖れる」
「かつて魔物になりかけたようにか」
「その力を制御できなくなれば終わりだ」
 実際に牧村はその時のことを思い出したうえで今話していた。このことは彼の記憶から離れられないものになっていた。しかしである。
 ここでだ。目玉がその彼に言うのであった。
「それは大丈夫だよ」
「安心していいというのか」
「君はもう乗り越えたからね」
 だからだというのである。
「だから力に飲み込まれたり溺れたりすることはもうないよ」
「そうか」
「だから心を鍛えたんだね」
 このことも指摘するのだった。
「そうだよね」
「それはその通りだ」
「なら大丈夫だよ。心はそれをはねつけるだけ強くなったから」
「だからか」
「心だよ」
 目玉はまた彼に告げた。
「大事なのはね」
「そうだな。貴様はもうその心配はない」
 死神も目玉と同じことを話してきた。
「既にな」
「そうか、既にか」
「安心しろ。貴様はもう魔物にはならない」
 死神は落ち着いた声で告げてきていた。
「それはない。そしてそのうえでだ」
「最高位にか」
「その天使になる」
 またこの話に戻った。
「安心することだ」
「安心していいか」
「それでいい。しかしだ」
「しかし、か」
「妖魔には敗れるな」
 このことは念を押すのであった。
「いいな、決してだ」
「それはか」
「そうだ、敗れるな」
 また言う彼だった。
「わかったな」
「それはわかっている」
 牧村も冷静に返すのだった。
「よくな」
「ならいい。それではだ」
「また会おう」
「またな」
 こう話してであった。双方別れた。そして祖父母の屋敷に帰るとであった。祖母が帰って来た彼に対してこう言ってきたのであった。
「ああ、今晩なんだけれど」
「何だ」
「スパゲティにするわよ」
 こう言ってきたのである。
「それでいいわね」
「スパゲティか」
「来期好きよね」
 そしてこうも言ってきたのだった。
「そうよね」
「好きだ」
 言葉は素っ気無いが真実を言っていた。
「それもかなりだ」
「昔からそうだったしね」
「それで今晩はそれか」
「最近和食が多かったでしょ」
 祖母はこのことも話してきた。
「だからね。それも考えてね」
「それでパスタか」
「そういうこと。イカ墨のね」
 しかもそれだというのだ。
「大蒜とオリーブを効かせるから」
「そうしたものも作れたのか」
「勿論よ、お婆ちゃんは洋食も作れるよ」
 祖母はこんなことも言ってきた。 
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