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髑髏天使

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第四十話 漆黒その十二


「俺は地の中で蠢き地の中で生きる」
「そうした妖魔だな」
「そうだ。その俺をどうして倒す」
 また死神に対して言ってみせた。
「どの様にしてだ」
「一つ言っておく」
 死神は妖魔のその言葉に落ち着いた声で返してみせた。
「一つだ」
「何だ、それは」
「私はただ身体を斬るだけではない」
「俺だけをだというのか」
「私の鎌は他のものも斬ることができる」 
 そしてだ。こうも言ってみせたのだ。
「魂もだ」
「魂をか」
「そしてだ」
 言葉を続ける。
「貴様もまた倒すことができるのだ」
「面白い。それでは斬ってみるがいい」
 妖魔は死神の言葉を受けてさらに楽しげに言ってきた。
「俺を。どうするつもりだ」
「行くぞ」
 死神は言った。そしてだった。
 一旦跳んだ。そのうえで下にその大鎌を投げてみせた。それと共に言った。
「これで決まる」
「鎌を地面に投げ付けるだけではないのか」
「そう思うか」
「違うというのか」
「そうだ、それを今から見せよう」 
 こう言うのだった。その激しく回転する己の大鎌を見ながらだ。
「貴様にだ」
「では。俺はだ」
 ここでだ。妖魔はその身を地の中に隠してみせた。
 姿は見えなくなった。それで完全にだった。
「さて」
 しかしだ。声だけは聞こえてきた。
「どうする?」
「どうするか、か」
「俺はこうして姿を消した」
 楽しげに死神に対して話してきていた。
「さて、それでどうするつもりだ」
「言った筈だ。私の鎌に斬れないものはない」
 鎌は放ったままだ。そのままだった。
「何もかもな。斬るのだ」
「では今の俺もか」
「そうだ。斬れる」
 そうだというのだった。
「既に貴様のいる場所はわかっている」
「馬鹿な。俺の姿は見えない筈だ」
「確かに見えない」
 それは彼も否定しなかった。
「それはだ」
「見えなければわからない筈だが」
「目だけではないのだ」
「耳か。しかしだ」
 耳についてもだった。妖魔は笑って言ってきたのだった。
「その耳も地の底からの声にはわかるまい」
「それもまたその通りだ。私は今は耳も使っていない」
「五感でわからなくして何でわかる」
「そのこともまた貴様に教えよう」 
 これが彼の言葉だった。
「よくな」
「教えるだと」
「そうだ。あの世に送るそのついでにだ」
 こう妖魔に対して言ってみせるのだった。
「それも教えてやろう」
「戯言か」
「そう思うか?」 
 死神の声は笑っていない。そのままだった。
「思うのなら思えばいい」
「いいというのだ」
「そうだ、そう思っておくといい」
 彼はまた言ってみせた。
「そのうえであの世に行くといい」
「ふん。かなりの自信があるのは確かだな」
「自信ではない」
「では何だ」
「確信だ」
 それだというのだった。
「今私は確信しているのだ」
「確信。貴様の勝利をか」
「それを確信している」
 その激しく回転する大鎌を見ながらの言葉だった。 
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