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髑髏天使

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第三十九話 妖魔その十五


「また会おう」
「消えるか」
「また現われる」
 牧村の言葉に返してみせた。
「またな」
「その時にはじまる」
 死神は牧村に言っていた。今は。
「いいな」
「わかった。妖魔か」
「激しい戦いになる」
 このことも告げた。
「わかったな」
「よくな」
 邪神は消えた。その頃にはもう夜になっていた。漆黒の邪神はその漆黒の中に消えていた。
 その姿が消えたのを見届けてからだった。死神は牧村に顔を向けて言ってきた。
「さて」
「さて、か」
「今はこれで終わりだ」
 こう彼に言うのだった。
「しかしこれで終わりではない」
「はじまりだな」
「新たな戦いのな。それではだ」
「明日にでも戦いがはじまるか」
「覚悟しておくことだ。いいな」
「わかっている。それではな」
 牧村はこう言ってだった。帰るのだった。
 サイドカーに乗り。そこでまた話す。
「それではな」
「帰るか」
「これでだ」
 こう言ってだった。ヘルメットも被った。
 それで帰ろうとする。その時にだった。目玉が出て来て声をかける。
「いいかな」
「何だ」
「これからの戦いはかなりとんでもないよ」
 こう彼に話すのである。
「尋常じゃないまでにね」
「尋常ではないか」
「うん、間違いなくね」
 こう話すのである。
「妖魔は魔物みたいにルールの中で動いたりしないからね」
「無法か」
「というか法とは別の世界の連中だから」
「だから混沌か」
「そういうこと。奴等は混沌の世界の住人だよ」
 それが妖魔達だというのだ。そうしてだ。
「だからね。どんなことでもするよ」
「破壊と殺戮か」
「周りを巻き込むこともあるしね」
「例えばだが」
 死神もここでサイドカーに乗ってエンジンを入れようとする牧村に話す。
「私は命を刈る相手はあらかじめ決められているのだ」
「あらかじめか」
「そうだ、無闇に命を刈る訳ではない」
「そこには法があるか」
「神は法の中で動くものだ」
 そうだというのである。
「その法を破ればそれで神でなくなるんだ」
「神でなくなるか」
「神にとっても法は絶対のものだ」
「魔神でもね」
 目玉がまた話す。
「けれどあの連中は違うんだよ」
「邪神は法はないか」
「そうだ、法があるとすればだ」
「混沌そのものだね」
 それが彼等の法だと。死神も目玉も話す。
「よくわかっておくことだ」
「何だってするからね」
「では俺のこれからの戦いは」
「周りを守らないといけないよ」
 目玉もそれを言う。
「特にさっきのナイアーラトホテップはね」
「手段を選ばない」
 そうした者だとだ。二人は見抜いていた。
「策略家でもあるし」
「用心しておけ」
「おおよそわかった。では妖魔はだ」
「自分だけを注意しないで」
「それはな」
「話はわかった」
 ここまで聞いてだ。牧村はエンジンを入れた。既にヘルメットは被っている。
 そのうえでだ。動かしながらだった。
「では。そうした戦いだとしておく」
「うん、じゃあね」
「また会おう」
 二人の別れの言葉を受けてだ。牧村は彼等とも別れたのだった。
 そしてそのうえで今は屋敷に戻った。再び日常の生活に戻ったのである。


第三十九話   完


                  2010・6・12 
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