髑髏天使
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第三十八話 老婆その十六
「ようやく出て来たのじゃ。そうさせてもらうぞ」
「好きにすればいい」
牧村も彼女に言う。
「それではな」
「またな」
こう話してだ。二人と老婆は別れた。それでこの時は終わりだった。
しかしだ。この次の日だ。外でランニングをしている彼の横にハーレーが来た。
そのハーレーに乗っている一人の男が言ってきた。漆黒のスーツとヘルメットの彼がだ。
「貴様か」
「そうだ、私だ」
こう牧村の言葉に応える。
「会ったそうだな」
「あの魔神とか」
「そうだ。バーバヤーガだ」
「バーバヤーガというのか」
「ロシアの魔神だ」
その国まで言うのだった。
「これで全てだ」
「十二魔神が全て揃ったか」
「そうだ。そしてだ」
「わかってるかも知れないけれどね」
目玉も出て来た。死神の頭上を飛びながらだ。牧村に対して言ってきていた。
「もう一つ出て来たし」
「妖魔だな」
「彼等についてはよく知らないけれどね」
「私もだ。妖魔については知らない」
「神である貴様等もか」
牧村はこのことには意外なものを感じていた。
「知らないのか」
「何かね。相当昔にいた存在らしくてね」
「私達の世界ができる、それよりもだ」
「神々の世界ができる前からの存在か」
「そうなんだよね」
目玉は語るのだった。
「これがね」
「そして長い間何処にいるのかわからなかった」
このことも話すのだった。
「全くだ」
「全くか。ただ」
「ただ。何だ」
「妖魔、かなり不気味な存在の様だな」
本能として悟っている言葉だった。
「どうやらな」
「そうだな。それはな」
「間違いないね」
死神も目玉もだった。牧村の今の言葉に頷くのだった。
「得体の知れない邪悪なものを感じる」
「魔物にはそれはなかったけれどね」
「そうだな。魔物は邪悪ではない」
「ただ戦うだけだしね」
そうだというのだった。魔物は戦うだけだ。邪悪さはそこにはないのだ。
「しかし妖魔にはだ」
「邪悪なものを感じるね」
「何が出て来る」
また言う彼だった。
「それでだ」
「さてな。その怪しい存在だが」
「多分僕達と争うね」
二柱の神々は既にそれを察していた。存在を察してすぐにだ。
「どういうことになるか」
「それが問題だね」
「そちらも調べるな」
「調べる」
「勿論ね」
二人もそれに返す。
「では。そういうことでだ」
「多分近いうちに戦いがまたはじまるよ」
「戦いか」
「どうやら貴様が人のままでいているということは」
牧村への言葉だった。彼を見ないまま声だけを向けていた。
「この為だったようだな」
「この為か」
「そうだ。妖魔との戦いの為だ」
「その時の為に俺は人間でいた」
「そうかも知れない。これは運命だったのだろう」
今度はだ。運命という言葉を出したのだった。
「人のままでいたのはな」
「そういうことになるか」
「ねえ」
今度は目玉がだった。彼に声をかけてきた。双方バイクで進みながら言葉のやり取りをしていた。そのうえでの話になっていたのだ。
「今度の戦いだけれど」
「それについてか」
「ひょっとしたら今までよりも激しい戦いになるよ」
こう牧村に言うのであった。
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