| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髑髏天使

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三十八話 老婆その六


「だが」
「だが?」
「貴様達と戦うにしろ」
「はい」
「妖魔達か」
 このことも言うのであった。
「あの者達にしてもだ」
「ほう」
 老人も今の彼の言葉に反応を見せた。そうしてだ。
 目の光を変えてだ。こう言ってきた。
「御存知でしたか」
「話は聞いている」
 こう返してもみせる。
「既にな」
「そうですか。実はですね」
「実は?」
「彼等は私達にとっては非常に好ましくない存在なのです」
 このこともまた牧村に話すのであった。
「何故ならですが」
「それは何故だ」
「私達は戦いを楽しみと考えています」
「そうだったな。確かにな」
「しかし彼等は違います」
 そしてだ。次に言う言葉は。
「彼等は破壊と殺戮、いえ」
「いえ?」
「混沌の存在です」
「混沌か」
「私達もまた秩序を重んじています」
「秩序をか」
「はい、秩序をです」
 その彼等の秩序も話すのであった。
「戦いにおいてもルールとモラルを見ています」
「しかし妖魔はか」
「混沌です」
 秩序と対極にある。それだというのである。
「そうした存在ですから」
「だからこそ対立するのだな」
「そうなります。私達も彼等についてはまだ殆ど知らないのですが」
「殆ど!?」
 牧村は魔神である老人のその言葉に目の色を変えた。
「どういうことだ、それは」
「どういうこととは」
「何故魔神が知らない」
 問うのはこのことだった。
「それは何故だ」
「何故か、ですか」
「何万年も生きているな」
「はい」
 老人もこのことは頷いてみせた。
「その通りです」
「では何故知らない」
「我々もです」
「我々もか」
「知らないこともあります」
 そうだというのである。
「ましてやです」
「ましてや?」
「それが過去ならば」
「過去?」
「私達の前の時代の存在ならばです」
 その妖魔達への言葉だ。
「知ることができないのも道理ではないでしょうか」
「記録は残っていなかったのか」
「人間は残していたようですね」
「微かに、でしかないようだがな」
「しかし残していたのは事実です」
 それはだというのである。
「ですが我々は」
「知ることができなかったか」
「残念ながら」
 何時になくその言葉に感情を入れている老人だった。その感情は悔しさであり悲しさでもあった。そうした感情を珍しく見せていたのである。
「その通りです」
「そうか」
「そしてです」
 ここまで話したうえでまた牧村に対して言ってきた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧