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髑髏天使

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第三十七話 光明その十八


「それでね」
「太るぞ」
「運動してるから太らないの」
 こう返すのはいつも通りだった。
「だからいいのよ」
「全く。相変わらずだな」
「気にしない気にしない」
「俺の食べる分は気にする」
「大体いつも御飯私の倍は食べてるじゃない」8
 今度はこう返す未久だった。
「それでまだお菓子もだなんて」
「では御前もそう食べろ」
「食べないから」
 少しむっとした顔で返すのだった。
「っていうか食べられないから」
「それでも甘いものはか」
「だから。言うでしょ」
「別か」
「そうよ。甘いものは別腹よ」
 言いながら今は御飯を食べている。それももうすぐ終わりだった。
「だからいけるのよ」
「麺類もそうなのか」
「麺類もって?」
「ここで聞いた言葉だがな」
「うん」
「そう言っていた人がいた」
 妹に対しての言葉である。
「麺類は別腹だとな」
「そうなの」
「確か焼肉屋の前だったな」
「あっ、そうそう」
 焼肉と聞いてだった。未久はその顔をさらに明るくさせた。そのうえでの言葉である。
「それ聞いて思い出したけれど」
「何だ」
「明日焼肉食べに行かない?」
 今度の提案はそれだった。
「焼肉ね。行かない?」
「焼肉か」
「そう、焼肉」
 見れば目も輝かせている。そうしてまた言うのだった。
「それでどうかしら」
「焼肉か」
「何か足りないって思ってたのよね」
「何かか」
「そうよ。大阪の美味しいものはもうかなり食べたけれど」
 何処までも食べ物から離れない。
「そうそう、大阪は焼肉もあったのよね」
「名物の一つか」
「そうなってるのよ。じゃあ明日はね」
「焼肉か」
「鶴橋連れて行って」
 こう兄にねだる。
「鶴橋にね。御願いね」
「鶴橋か」
「サイドカーだったらすぐよね」
「一応はな。だが」
「だが?」
「食べてばかりだな」
 少し真剣な顔での今の言葉だった。
「本当にな」
「いいじゃない、大阪なんだし」
 未久の言葉はそれも当然というものだった。
「そうでしょ?大阪なんだし」
「大阪ならいいのか」
「いいのよ。だから何度も言うけれど食いだおれ」
 それで説明がつくからかえって不思議ではあった。牧村にとっては。
「それじゃあ食べないとね」
「明日は焼肉か」
「それにキムチと冷麺よ」
 その二つも忘れないというのだ。
「だって焼肉なんだから」
「その二つはか」
「ホルモンも食べましょう」
 勿論これも忘れていなかった。
「明日もお腹一杯食べないとね」
「本当に食うものだな」
「人間食べられる時に食べておかないと」
 今度の言葉はこれだった。
「後悔するし」
「だからか」
「だから行きましょう」
 最早それが規定事項となっている言葉だった。 
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