髑髏天使
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第三十七話 光明その八
「心がね。牧村君のね」
「そうか、心がか」
「だからお父さんもお母さんもね」
「あの人達か」
「気に入ってるのよ、実はね」
何気に彼の運命を大きく決めることだった。
「性格がいいってね」
「性格はか」
「そうよ、それはいいっていうのよ」
笑顔での言葉だ。ヘルメットの中で言ったのである。
「とてもね」
「いい感じだな。しかし」
「しかし?」
「俺は好かれているのか」
「嫌われてはないわ」
このこともはっきりと告げた若奈だった。
「安心していいわ、それもね」
「そうか」
「確かに愛想はないけれどね」
それも言うのだった。
「無愛想だからね」
「それは諦めろ」
「なおすことはできないの」
「どうしてもだ。しかしそれが問題になることはない」
「まあね。そっちはね」
諦めたような話だった。
「私の方で何とかするし」
「何とかか」
「そうよ。私は笑顔担当でね」
そうだと話すのである。
「それでやっていけばいいし」
「そうか」
「牧村君は調理とか。お皿洗って。お掃除もね」
何気に言うことは多かった。
「頑張ってもらうし」
「何の話しだ、それは」
「将来の話よ。それじゃあね」
「それじゃあか」
「お屋敷行きましょう。いつも通りセコンドさせてもらうから」
こう話してだった。その屋敷に着いてからすぐにトレーニングに入った。牧村のその動きを見てである。若奈は彼に対して言うのだった。
今二人は大阪の道にいる。若奈は白いジャージで牧村は黒だ。それぞれの格好でトレーニングをしているのだ。若奈は自転車に乗り彼女の隣にいる。
そしてだ。その言葉はだ。
「ねえ」
「何だ」
「前より動きがよくなってるわね」
こう言うのだった。
「一段とね」
「数日でか」
「男子三日会わざればっていうじゃない」
自転車の上で笑顔で言ってみせたのである。
「それを考えたらね」
「三日の間にもか」
「そうよ。動きよくなってるわ」
そうだというのである。
「さらにね」
「そうか。ならいいがな」
「全体的にね。それに」
「それに?」
「動きが思いきりよくなってる感じね」
それも言うのだった。
「凄くね」
「思いきりもか」
「よくなってるわ。何かあったの?」
「何か、か」
その言葉を聞いて考える顔になる。そのうえでこう言うのだった。
「吹っ切れようとしているからな」
「吹っ切れるって?」
「思うところがあった」
ここでも髑髏天使としての話はしなかった。
「しかしそれからだ」
「吹っ切れかけてるのね」
「何とかな。それにだ」
「それに?」
「そこから新たなものを見られた」
そうだというのである。
「後はだ」
「そこに入るのね」
「入るというかそこに行くのか」
こう表現するのだった。
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