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髑髏天使

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第三十六話 日常その二


「智天使の力はかなりのものじゃな」
「制御するのが難しいまでにな」
「うむ、しかしそれは制御できる」
「できるか」
「心によってできるのじゃ」
「心か」
「左様、心じゃ」
 それだというのだ。
「心によって制御できるのじゃ」
「心か」
「人として強い心を持つ」
 また言う博士だった。
「それによってじゃ。制御できる」
「心でか」
「左様、それで心じゃが」
「心をか」
「心を鍛える」
 博士の言葉が強くなった。
「そうするのじゃよ」
「そしてそれによってか」
「智天使の力の舵取りをするのじゃ」
 具体的にはそういうことだった。心である。
「人の心でじゃ」
「ということはだ」
 牧村はその言葉を聞いて述べた。今の己のことをだ。
「俺は今」
「今とは?」
「座禅をしている」
 このことを話したのだった。
「それはいいのだな」
「よい」
「いいのか」
「かなりのう。そうか、座禅か」
 博士はその座禅についても話すのだった。
「あれをするとは。いいところに目がいったものじゃ」
「そこまでいいのか」
「座禅は心のものじゃ。そして」
「そして?」
「全てでもある」
 博士はこうも言った。
「全てを見るものでもあるのじゃよ」
「宇宙のだな」
「左様、だからこそ昔より行われてきた」
「悟りか」
「悟りを得るのは流石に容易なことではない」
 博士は悟りについても知っていた。やはり長きに渡って様々なことを学んできたわけではなかった。こうしたことも知っていたのである。
「だが。していくだけでもじゃ」
「いいだな」
「よい。そうして全てを見てじゃ」
「それからか」
「君はその髑髏天使の力を制御するだけの力を身に着けるのじゃ」
 こう告げるのである。
「よいな」
「そうさせてもらう。それならな」
「ただ。気をつけておくことじゃ」
 ここで博士は言った。
「座禅は確かにいいがじゃ」
「それでもか」
「それはあくまで正しい座禅をした場合じゃ」
 その場合というのである。あくまでだ。
「座禅と言っても色々じゃ。正しきものもあればそうではない場合がある」
「俺の座禅もそのことに気をつけるべきか」
「その通り。よく考えておくことじゃ」 
 博士はまた話した。
「よいな」
「わかった。それではお爺ちゃんの話をよく聞くことにする」
「あれ、お爺ちゃんいたんだ」
「牧村さんってお爺ちゃんいたんだ」
「そうだが」
 牧村は周りの妖怪達に対して怪訝な目をしてそのうえで返したのだった。
「それがどうかしたのか」
「いや、意外だって思ってね」
「そうだよね」
「本当にね」
 こう話すのであった。
「何か肉親の人とかいないっぽいから」
「天涯孤独って感じするよね」
「どうしてもね」
「俺も人間だ」
 しかし彼は言う。
「家族はいる」
「そういえば妹さんいるって言ってたよね」
「ああ、何か前にね」
「言ってた言ってた」
「そうそう」
 こう話していく妖怪達だった。 
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