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髑髏天使

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第三十五話 瞑想その十六


「今はだ」
「そうだね。いいと思うよ」
 その死神に目玉が言ってきた。
「楽しそうな街だしね」
「そうだな。しかし」
「しかし?」
「私も変わった」
 自分でこう言う死神だった。
「随分とな」
「そうだね、変わったね」
 目玉もそれを認めた。死神のその言葉をだ。
「昔はもっと無愛想で楽しみに興味がない性格だったけれどね」
「そうだったのか」
「無愛想なのは変わらないけれどね」
 それは変わらない。しかしだというのだ。
「それでも。楽しむようになったね」
「人の世界は思っていたよりいいものだ」
 こう言う死神だった。
「特に今の時代はな」
「そうそう、楽しいからね」
 目玉の言葉も笑っているものだった。
「じゃあ行こうか、楽しい場所にね」
「そうするとしようか。では髑髏天使よ」
「去るか」
「今はそうさせてもらう」
「それじゃあね」
 目玉は牧村に対して言葉をかけた。
「また会おうね」
「そうだな。またな」
 死神も最後の挨拶をしてだ。別れた。後に残った牧村はすぐに道場を後にした。そして自分の部屋に帰るとであった。
 携帯を見る。黒と銀のサイドカーと同じカラーリングの携帯である。その塗装も同じだった。黒地に銀のラインが入れられているものだ。 
 それを見ると留守電が入っていた。それを取り連絡するとだった。
「おお、帰ったか」
「博士か」
「そうじゃ、わしじゃ」
 声が笑っている。紛れもなく博士のものだった。
「わしじゃがな」
「何かあったのか?」
「大阪はどうかのう」
 まずはこのことを尋ねてきたのだった。
「そっちはじゃ。どうじゃ?」
「いい街だ」
 まずはこう答えた彼だった。
「楽しみの多い街だな」
「そうじゃろうな。ではわしもじゃ」
「博士が?来るのか」
「そうじゃ。行かせてもらう」
 実際にこう言ってきた博士だった。そして電話の向こうにいるのは彼等だけではなかった。あの面々の声もしてきたのであった。
「僕達も行くよ」
「大阪に行くのも久し振りだよね」
「確かにね」
「今から楽しみだよ」 
 妖怪達の声もしてきた。彼等もいるのだった。
「牧村さん、そういうことだから」
「皆で行くからね」
「待っていてね」
「目立たないか」
 牧村が言うのはこのことだけだった。
「妖怪が一緒だとだ」
「ああ、それは気にすることはない」
 博士はそれはいいというのであった。
「何の心配もいらんぞ」
「不要か」
「そうじゃ。不要じゃ」
 博士の言葉はそのままだった。笑っているものだった。
「何の心配もいらん」
「だといいがな」
「うむ、心配無用」
 博士はまた言ってきた。
「さて、それではじゃ」
「待っている」
 牧村は深く突っ込まなかった。しかし言わずにはいられなかった。
「ここまで無事に来てくれればそれでいい」
「それじゃあ今から」
「行こうか」68
「今から楽しみだよ」
「本当に大丈夫ならいいが」
 牧村の心配は尽きない。
「果たしてな」
「わしがおるからな」
 博士がここでまた楽しそうに言ってきた。 
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