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髑髏天使

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第三十五話 瞑想その十


「あれなのよね」
「あれとは?」
「学校の宿題だけじゃないからね」
「塾のもか」
「そうそう、それそれ」
 パンケーキをフォークとナイフで食べながら兄に言うのである。
「塾もあるし。それに」
「それにか」
「学校のも塾のも両方予習復習をしないといけないし」
「そうだな。どちらもあるな」
「お勉強も大変なのよ」
 言いながら頬を膨らませてもいる。
「夏休みだとかえってね」
「そこまで勉強しなくても生きてはいけるが」
「まあそうだけれどね。ただ」
「ただ、か」
「私八条大学医学部目指してるし」
「医学部か」
 言うまでもなく牧村の通っているその大学である。八条大学は様々な学部がある。医学部もあるのである。
「あそこか」
「八条大学の中で一番レベル高いわよね」
「確かドイツの細菌学の権威や陸軍の軍医達がそのまま入った」
「陸軍なの」
「そうだ。医学部は陸軍だ」
 八条大学医学部の特徴である。
「それに」
「それに?」
「工学部は海軍だ」
「じゃあ医学部と工学部は仲悪いの?」
「流石に今はそれはない」
 それはないと否定する。
「今ではどちらもそれぞれ陸上自衛隊と海上自衛隊になった」
「じゃあ数学部は航空自衛隊とか?」
「その通りだ」
 未久の言葉は見事に的中した。
「よくわかったな」
「自衛隊ねえ」
「強いぞ」
「けれどゴジラには負けるじゃない」
 未久はさりげなく言ってはならないことを言った。
「それも見事なまでに」
「大丈夫だ、それ以外にはそこそこ強い」
「動いてくれるの?」
「甚だ疑問だ」
 自衛隊はそもそもまともに動けるかという時点で疑問であったりする。これについても色々言われているが改善の兆しはない。
「果たしてな」
「やっぱりまずいんじゃ」
「だがいざという時は頼りになる」
 牧村は苦しかった。妹に対して分が悪い。
「いてくれるだけでも頼りになる」
「まあそうよね。けれど八条大学って自衛隊と関係深いのね」
「出身者は結構いる」
「そうなの。まあお兄ちゃんは自衛隊には向かないでしょうね」
「それは何故だ」
「だって。個人主義だし」
 指摘するポイントはそこだった。
「団体で何かするのは合わないじゃない」
「そうだな。それはな」
「無愛想だけれどコーヒーとか紅茶を淹れるのは上手いし」
 そしてこうした話になった。
「それにね」
「それにか」
「お菓子作るの上手だしお皿も奇麗に手早く洗えるし」
「つまり喫茶店か」
「やっぱりそれね。で、マジック」
「そこか」
「そこしかないじゃない」
 もう決まっているかの様な口調だった。 
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