髑髏天使
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第三十五話 瞑想その八
「本当にね」
「ずっとこの街にいられるからか」
「中学生ってそうはいかないのよ」
その自分の立場を言うのであった。
「もう忙しいし」
「部活にそれに熟か」
「そうよ、お兄ちゃんも中学生だったしわかるわよね」
「わかるがもう一度経験するつもりはない」
「だからなの」
「そうだ。そういうことだ」
妹に対してつれない感じで返す。しかしであった。
「だが。それだとな」
「それだと?」
「送ろう」
こう言うのであった。
「家までだ。サイドカーで送ろう」
「送ってくれるの?」
「神戸に帰るまでに何かあったら駄目だ」
何気に妹思いでもあった。言葉にも態度にも普段は中々出さない彼ではあるがだ。
「だからだ。送ろう」
「そうしてくれるの」
「遠慮することはない」
妹にこうまで言う。
「だからな」
「そう。じゃあ」
「行くぞ」
早速妹をガレージに連れて行く。そうしてだった。
彼女を実家まで送った。母はその彼を見て少し驚いた顔で言ってきた。
「お父さんのところに行ったんじゃなかったの?」
「戻って来た」
返答はこれだった。
「今な」
「夏休みの間ずっといるんじゃなかったの?」
「すぐに戻る」
しかしこうも言うのだった。
「大阪にな」
「お兄ちゃんが送ってくれたの」
彼の横にいる未久がこう母にいる。二人は今玄関にいる。そこで母と三人で話をしているのである。思わぬ親子の面会の場ではあった。
「ここまでね」
「えっ、大阪まで神戸って」
「何かおかしいか?」
「随分早く出たの?」
母はこう言って驚きを見せていた。
「まだ八時にもなっていないのに」
「物凄い速さで来たのよ」
しかし未久がここで言うのだった。
「ほら、お兄ちゃんのサイドカーでね」
「あれでなの」
「そうなの。高速を物凄い速さで帰って来たのよ」
「けれどここまで来るのにそれなりの時間がかかるし。前の車もあるし」
「全部追い抜いてきたのよ、お兄ちゃん」
「サイドカーで!?」
母はそれを聞いてまずは首を傾げさせた。
「随分無茶をしたの?」
「凄かったわよ。もう次から次に抜いてね」
「あのね、来期」
母は珍しく彼の名前を呼んでだ。心配する顔で言ってきたのだった。
「あまり無茶な運転はね」
「止めるべきか」
「そうよ。貴方だけじゃないし」
その心配する顔で我が子に話す。
「未久もいるから」
「だから余計にか」
「二人に何かあったら冗談じゃないから」
それが理由だった。
「わかったわね。くれぐれもね」
「わかった」
母の言葉を無下にすることはなかった。
「それでは。自重することにする」
「そうよ。未久もね」
「私も?」
「そうよ、貴女もよ」
娘に対しても言うのであった。
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