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髑髏天使

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第三十五話 瞑想その二


「串カツだけれど」
「それか」
「そうそう、それそれ」
 まさにそれだというのである。
「串カツも食べない?この後で」
「ハンバーグ二枚の後でか」
「駄目かしら」
「それで何本食うつもりだ」
「二十本?」
 具体的な数はすぐに出て来た。
「それ位ね」
「二十か」
「お兄ちゃんもいけるわよね」
「いけない訳ではない。いや」
「いや?」
「三十はいけるか」
 こう言うのだった。
「それだけな」
「いけるじゃない。じゃあこの後は」
「新世界に行く」
 場所は彼が指定した。
「そこにだ」
「新世界になの」
「そう、そこにだ」
 また場所を話した。
「そこに行くぞ、いいな」
「新世界にいいお店があるの」
「明日行くつもりだったがな」
 さりげなく予定も話すのだった。
「実はな」
「新世界ね」
「そうだ、そこでいいか」
「いいけれど」
 未久にそれを断る理由はなかった。
「じゃあそれでね」
「決まりだな。さて」
「ええ」
「食うぞ」 
 まずはハンバーグだった。
「食ってから行く」
「絶対に食べ終えないとね」
「食べ物は残すものではない」
 牧村の言葉が厳しいものになる。
「何があってもだ」
「食べ物は粗末にするな」
「その通りだ」
 まさにそれだというのである。
「だからだ。いいな」
「わかってるわ。私だってね」
 未久自身も真面目な顔で話す。
「それは大嫌いだから」
「御前も残さないな」
「残したら駄目っていつも言われていたじゃない」
「そうだな」
「お父さんとお母さんにね」
 二人の両親の教育だった。それで身に着いたことなのだ。
「だったらそれも当然よ」
「それではだな」
「ええ、まずはハンバーグを食べて」
 全てはそれからだった。
「それからよね」
「そういうことだ。それにしても」
「それにしても?」
「胸焼けには注意することだ」
 次に言うことはこれだった。
「それにはだ」
「胸焼けね」
「ハンバーグに串カツはな」
「癖強いわよね、確かに」
「だからそれには気をつけろ」
 このことを妹に話す。
「それはいいな」
「わかってるわ。じゃあね」
「食っていく」 
 二人はそのまま新世界まで向かいそうして串カツの店に入った。白い木造のその店に入るとだ。すぐに油の匂いと店の中の客達が目に入った。 
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