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髑髏天使

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第三十四話 祖父その二


「もうね。絶対にならないから」
「あいつを見て思ったな」
「そうよ。本当にいい判断材料になったわ」
 無論悪い意味での判断材料である。
「おかげでね」
「それで何になるつもりだ」
「そうね。OLかしら」
「OLか」
「別にいいわよね」
「悪いとは一言も言っていない」
 素っ気無くすらある今の返答だった。
「別にだ」
「そう。それじゃあ」
「仕事は何でもいい」
 それにはこだわらないとまでいうのである。
「御前の人生だ。自分が好きな仕事をするといい」
「お兄ちゃんはどうするの?」
「俺か」
「そうよ。やっぱりあそこ?」
 兄に対してこう言うのであった。
「マジックに。永久就職?」
「何故そうなる?」
「だって。若奈さんと一緒になるのよね」
 言うのはこのことであった。
「だったらそうなるじゃない。必然的に」
「だからどうしてその結論になる」
「違うっていうの?それとは」
「だから何故そうなる」
 少しむっとして返しているところがあった。
「そんなことは別にない」
「本当に?」
「嘘を言う必要もない筈だ」
 こうも言うのであった。
「違うか、それは」
「まあそうだけれどね」
「将来か。そうだな」
「それでどうするの?」
「考えてはいる」 
 それは彼自身もだというのである。
「サラリーマンか」
「あまりそういう感じじゃないと思うけれど?」
「それとも学者か」
「あの変な博士と一緒に妙なこと研究するの?面白そうね」
「そうだな。それもいいな」
 しかもそれに乗り気な様子さえ見せる。
「博士と共に様々なことを学ぶもだ」
「どっちにしても若奈さんを大切にしてね」
「だからどうしてそうなる」
「だって。若奈さんってマジックの跡取り娘よ」
 古い言葉であるが確かにその通りであった。若奈はそうした立場なのである。
「それだったらやっぱり」
「だからどうしてそうなる」
「だから違うの?」
「違う」 
 きっぱりと断言してみせた。
「それはない」
「どうかしらね。わからないわよ」
「まだ言うのか」
「だって。お兄ちゃんお菓子好きよね」
「ああ」
「作るのも食べるのも」
 お菓子作りは意外なことに彼の趣味であり特技でもある。
「それにお茶やコーヒーも」
「淹れるのには自信がある」
 そちらもあるのであった。
「それじゃあ完璧じゃない」
「だから何が完璧だ」
「喫茶店をやっていくの」
 やはり話をそこにやる若奈だった。
「とりあえずお兄ちゃんはお菓子とコーヒーとかお茶に専念して接客は若奈さんね。あのエンゼルスマイルには誰だって陥落するから」
「どうしてもそちらに話をやりたいのだな」
「そうよ」
 完全に開き直った言葉だった。
「その通りよ」
「居直ったな」
「居直ったから今もここにいるし」
「そうだな」
 兄は妹の今の言葉にも頷いた。 
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