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髑髏天使

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第三十三話 闘争その九


「しかし。それでもじゃ」
「人間だな」
「左様、魔物ではない」
「俺は人間か」
「言うまでもないと思うがのう」
 博士は牧村を見つつまた告げたのだった。
「そんなことは」
「そうか」
「そうじゃ。とにかくじゃ」
「とにかく、か」
「闘いから心を離すのも重要じゃ」
 今度言うのはこのことだった。
「今までは何かあればすぐに考えておったな」
「否定しない」
 まさにその通りだった。髑髏天使になってからこのことが頭から離れたことはなかった。それは一秒たりともそうなのであった。それも否定できなかった。
「そうか。時にはか」
「少しでもいい。少しでも全然違う」
「そうしていけば魔物になるということはないのか」
「少しはましじゃな。それじゃ」
「今度は何だ」
「もうすぐ大学も休みに入る」 
 博士は大学の話に変えてきた。
「その間どうにかしてみればいい」
「どうにか、か」
「闘いのことを僅かの間でも忘れたり」
 他のことも言うのであった。
「それにじゃ」
「心の鍛錬か」
「両方してみればいい。どうじゃ?」
「考えさせてもらう」 
 静かに答えた牧村だった。
「それはな」
「そうするとよい。今君はかなりの力が備わった」
「智天使か」
「左様、これまでの天使とは全く違うまでじゃ」
 そこまで強大なのだというのだ。
「だからじゃ」
「それに飲み込まれても駄目か」
「魔物は戦いに溺れ力に飲み込まれてなる」
 そうしてなる存在だというのだ。
「だからじゃ。力が大きければじゃ」
「それを使いこなすものが必要か」
「そういうことじゃよ。わかったな」
「わかった」
 今度の返答は一言であった。
「少しだがやり方が見えた」
「ではどうするのじゃ?」
「祖父のところに向かう」
 具体的にはそうするというのである。
「まずはだ」
「御祖父君のところにか」
「剣道をやっている。大阪でな」
「いいよね、丁度」
「本当にね」
 妖怪達も頷くことだった。
「じゃあ頑張ってね」
「それでね」
 彼らはそれぞれ牧村に告げた。
「僕達も応援に覗きに行くから」
「その時はね」
「いやいや、君達が行くとじゃ」
 博士は彼等をこう言って止めてきた。
「それはかえってよくない」
「あれっ、何で?」
「それはどうしてなの?」
「君達は目立ち過ぎる」
 少なくとも一つ目小僧や輪入道といった面々を見ればそうとしか思えなかった。赤鬼にしても一反木綿にしろ塗り壁にしろだ。異様なまでに目立っている。 
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