| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髑髏天使

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三十二話 変貌その十


 すると老人の後ろにだ。二体の魔物がそれぞれ左右に出て来たのである。
「では百目様」
「今回は我等が」
「頼みますね」
 その魔物達に告げるのであった。
「ここは」
「有り難き御言葉」
「この時を待っていました」
「闘う時を」
「この時を」
 こうそれぞれ言ってみせる彼等であった。
「では早速」
「はじめても宜しいですね」
「では」
「どうぞ」
 老人も彼等にそれを許すのだった。温和な笑みは期待で笑っている笑みになっていた。その笑みでの言葉であった。
「お任せしますので」
「智天使になったとか」
「早いものだな」
 魔物達は老人の後ろから出て来た。その姿は今はそれぞれ若者の姿をしている。違うといえばその目が赤く光っているかどうかだけであった。
 しかしその赤い目を爛々と輝かせながらだ。魔物達は牧村に言ってきたのである。
「いいな、髑髏天使よ」
「これから貴様と楽しむ」
 あえて楽しむと言ってみせたのは明らかであった。
「そして倒す」
「覚悟するのだ」
「楽しむか」
 牧村もまたそこに反応を見せた。
「戦いを楽しむ。それが魔物だったな」
「如何にも」
「だからこそだ」
 こう返す彼等だった。
「髑髏天使の姿になるがいい」
「すぐにだ」
「わかっている」
 髑髏天使もその言葉を受けてであった。
 すぐに両手を拳にした。そうして。
 それを胸の前で中指のところで打ち合わせる。するとその打ち合ったところから白い光が放たれた。彼はその光の中で姿を変えた。
 そうしてその異形の姿になるのであった。髑髏天使の姿になったのだ。
「行くぞ」
 右手を肘を曲げて前に出して一旦開いてから握り締める。そのうえで言うのであった。
 そして魔物達もだ。その姿を変えてきた。
 人間の姿から徐々に変わる。その正体は。
 一人は前足が両方とも鎌になった鼬だ。そしてもう一人は巨大な蜘蛛だ。それぞれそうした姿になってみせてきたのであった。
「さて、それではだ」
「我等の名前はだ」
「言われずともわかる」
 こう返す髑髏天使だった。
「そうか、既にか」
「わかるというのだな」
「それは」
「鎌鼬と土蜘蛛だな」
 こう言ってみせたのである。
「そうだな」
「如何にも」
「その通りだ」
 魔物達もその通りだと答えるのだった。
「我等の名前はそれだ」
「知っていたのか」
「かつては妖怪だった」
 髑髏天使はまた述べた。
「しかし今はだ」
「その通りだ。こうして魔物になった」
「今はな」
 その通りだと彼にも返すのだった。
「戦いに喜びを感じてだ」
「こうなっている」
「戦いに喜びか」
 髑髏天使は魔物達のその言葉を聞いて静かに言うのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧