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髑髏天使

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第三十一話 赤眼その十九


「何だ、その魔物は」
「ウィプリという」
 紳士がその魔物の名前を彼に話した。
「それがこの者の名前だ」
「そうか、それがか」
「そうだ。我が眷属でもある」 
 紳士はこのことも述べてきた。
「吸血鬼なのだ」
「それが吸血鬼か」
「吸血鬼といっても様々だ」
 こうも話すのだった。
「それがだ」
「血を吸うから吸血鬼か」
「そうだ。そうした意味では吸血鬼は世界各地にいる」
 このことも話すのであった。
「それは言っておく」
「わかったと答えておこう」
「それが返答か。承知した」
 紳士もそれを受けると返した。
「それでは。闘うか」
「相手は誰でも構わない」
 言いながらその両手に持つ剣を構える。
「それは言った通りだ」
「言葉には偽りはないか」
「偽ったところで勝てはしない」
 あくまで闘いだけを見ているのである。
「だからだ」
「そうか。それではだ」
「来い」
 魔物に対する言葉だった。
「勝ってみせよう」
「では。ヴァンパイア様」
「うむ」
 魔物の最初の言葉は紳士に対するものだった。紳士もそれに応えて述べる。
「それではこの場は」
「楽しみにしている」
 これが紳士の返答だった。
「その闘いをだ」
「有り難き御言葉。それでは」
「さて、それではだ」
 紳士は話を終えてから一旦髑髏天使に顔を向けてだ。また言ってみせるのだった。
「髑髏天使よ」
「俺にも闘えというのか」
「そうだ」
 彼に対する言葉でもあったのだ。
「今度の闘いも楽しみにしている」
「やがて貴様とも闘うことになる」
「その時のことはさらに楽しみにしている」
 魔神の今度の言葉はこうしたものだった。
「私もまた闘いたいのだからな」
「闘いの中にいるから魔神になるのだったな」
「そして魔物になった」
 これはその魔物の言葉である。
「魔物はそれにより魔物となるのだからな」
「そうだったな」
 そのことは既に彼も知っていた。これまでの闘いでだ。
「貴様等はそうだったな」
「闘いが魔物を魔物にしていくのだ」
 魔物はこうも言った。
「覚えておくことだ」
「その言葉は受けた。それではだ」
「行くぞ」
 髑髏天使はこれ以上言わなかった。
「それでいいな」
「気が早いな」
「必要な話は終わった」
 これは彼の判断である。
「だからだ。はじめるとしよう」
「それではだ」
 紳士も彼の言葉を受けて述べた。
「私もこれでだ」
「では」 
 魔物はその彼には恭しく一礼した。
 それからまた彼に対してこう述べるのだった。
「後は私が」
「楽しませてもらう」
「御意」
 こうしてであった。紳士は姿を消し髑髏天使と魔物だけになった。そしてそれは彼等だけではなかった。もう一組もそうなのであった。
 ロッカーはだ。相変わらず軽い調子で死神に言ってきた。
「それじゃあ俺はな」
「帰るのだな」
「姿を消させてもらうぜ」
 その口調での言葉である。身振り手振りも軽い。 
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