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髑髏天使

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第三十一話 赤眼その八


「これがよくのう。まあ確か」
「確か?」
「それで?」
「そろそろ天海僧正の歳じゃったかな」
 江戸時代初期の怪僧である。その出生も全半生も謎に満ちている。そのうえ能力についても様々なことが言われている。非常に謎の多い人物なのは間違いない。
「確か」
「ああ、あの不気味なお坊さんだね」
「あの人の歳なんだ」
「一応戸籍ではじゃ」
「百十七歳になってますよ」
 ろく子の首が伸びてきて話してきた。
「そちらでは」
「経歴でもそうじゃったかな」
「はい、そうなっています」
 一応そういう年齢になっているのだという。
「その通りです」
「ふむ。左様か」
 それを聞いて納得した顔になった博士だった。
「もういよいよ肩を並べるのじゃな」
「やっぱり仙人じゃないの?」
「ねえ」
 妖怪達はここでまた話した。
「人間でそこまで生きてるなんてね」
「まずないし」
「しかも背筋だってしっかりしてるしね」
「人間とは思えないから」
「まあ長生きなのは事実じゃな」
 流石にそれは否定できなかった。当人でもだ。
「しかし思えば明治も遠くなったのう」
「もう生きてる人殆どいないよ」
「大正の人もね」
「人は絶対に死ぬからね」
 人は死ぬ、それはまさに絶対のことだった。誰も否定できないことであった。
 そしてだ。それを聞いた牧村がまた言ってきたのである。
「妖怪も死ぬのか」
「それはやっぱりね」
「僕達だって生きてるんだし」
「死ぬよ」
「絶対にね」
 それは彼等もだという。他ならぬ彼等自身の言葉である。
「生きてるんだから」
「生きてる限り死ぬよ」
「それはね」
「そうか」
 それを聞いて静かに頷く牧村だった。
「妖怪もか」
「ただ長生きだけだよ」
「人間と比べてね」
 それだけの差だというのである。
「生きていたら絶対に死ぬよ」
「それはもう避けられないから」
「神様は別だけれど」
「神はか」
 それは聞いて納得した彼だった。
「そうか。神はか」
「あの十二魔神とかね」
「死神とかはね」
「死なないけれど」
 彼等はというのだ。それは死なないという。
「神様は僕達とは違うからね」
「不死身だから」
「例え死んでも」
 死んでも、と話されるのだった。不死身である彼等が死んだ場合はどうなるかである。
「すぐに生き返ってくるから」
「肉体が元通りになってね」
「魂も入ってね」
「そうなるのか」
 それを聞いて言葉だけで頷く牧村だった。
「やはり死なないのか」
「うん、死なないから」
「それはわかっておいて」
「まあ知っていたとは思うけれどね」
「知ってはいなかった」
 知っているかというとそれは否定するのだった。
「わかってはいた」
「わかってたの」
「そっちなんだ」
「そうだ。わかっていた」
 そちらだというのである。 
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