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髑髏天使

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第五話 襲来その二


「それが俺の宿命なのだからな」
「いい心掛けだね。それじゃあ」
 男の顔が変わっていく。顔中に黒い羽毛が生え口が尖っていく。目もそれと共に黒く大きいものとなる。そして背中から黒い大きな翼が生えたのだった。それはまさに烏のものだった。
「遊ぼうか」
「望むところだ」
 牧村は彼を見上げつつ両手を拳にした。そしてそれを己の胸の前で打ち合わせた。そこから光が発し全身を包んでいく。その光が消えた時彼は白銀の鎧を身に纏う髑髏天使となっていたのだった。
「行くぞ」
 右手を一旦開きそのうえで握り締める。それが合図であった。
 闘いが幕を開けた。最初に動いたのは烏男だった。彼は翼を大きく動かしてきた。
「それじゃあ行くけれど」
「むっ!?」
「多分僕の闘い方は君が今まで知らないものだろうね」
「俺が。知らないだと」
「そうだよ。ほら」
 ここで羽ばたき空に舞いだした。
「今までこういうことをしてきた相手はいたかな」
「正直に答えようか」
「うん、是非共」
「御前の言う通りだ」
 本当に正直に答えてみせた。ここでは隠しても何の意味もないと判断したからである。
「御前がはじめてだ。空を飛んだ相手はな」
「それはどうも」
「考えてみればそれも道理だ」
 髑髏天使の言葉はそのような相手を前にしても冷静沈着なままであった。
「何しろ魔物だ」
「それはわかってくれていると思うけれど」
「魔物だ。だからこそだ」
 指摘されたがそれでも言う髑髏天使だった。
「どんな奴がいてもおかしくはない。水の中を自在に動ける奴もいたしな」
「それが僕なんだけれどね」
 嘴の両端が歪んでいた。笑っている証拠である。
「他にも色々といるけれどね、そういう仲間は」
「そうだろうな。空を飛ぶ相手か」
「僕が最初で最後の相手になるよ」
「色々といるというのにか?」
「そうだよ。だって」
 周りに烏達を従え空を舞っている。髑髏天使を悠然と見下ろしつつの言葉である。
「君は。僕に倒されるからね」
「大した自信だな」
「自分をよくわかっているんだよ」
 やはり相当な自信家であった。それを隠そうともしない。
「よくね」
「では今ここで俺を倒すというのか」
「当然そのつもりさ。じゃあ」
 翼の羽ばたきが余計に増した。
「行くよ、まずは」
「来るか」
 翼に手をやり何かを取って来た。見ればそれは漆黒の羽根であった。烏の羽根である。
 それを数枚手に取っている。顔の前に笑いつつやりそうして。髑髏天使に向けて投げてきたのであった。
「さあ、小手調べだよ」
 羽根を放ったうえで髑髏天使に声をかけてきた。
「これは避けられるかな。身のこなしは相当なものだって聞いているけれどね」
「それも知っているのか」
「教えてくれる仲間がいるんだ」
 烏の目が細まっている。今度は目で笑っていた。
「仲間って言うには随分と偉い方だけれどね」
「偉いだと」
「ああ、このことについて答えるつもりはないからね」
 今の髑髏天使の言葉には答える素振りは見せなかった。
「悪いけれどこちらにも事情があるんだよ」
「貴様の事情は俺にはどうでもいいものだがな」
「話がわかるね。じゃあ」
 あらためて彼に声をかけてきた。
「この黒い羽根。どうやって避けるの?」
「避けるか」
「そうだよ。言っておくけれど僕の羽根は鋭いから」
 声も笑ってものになっていた。
「当たれば死ぬよ。幾ら鎧を着ていてもね」
「避ける必要はない」
 髑髏天使は静かにこう答えたのだった。烏男と彼の羽根を見つつ。
「この程度ではな」
「この程度ねえ」
「そうだ」
 言いつつ右手に剣を出してきた。
「これでな。こうするまでだ」
「んっ!?」
「俺を甘く見ないことだ」
 この言葉と共に剣を振るいだした。そうして烏男の黒い羽根を次々と払い落としていく。その剣捌きは以前にも増して速く鋭いものになっていた。
 瞬く間に全て払い落としてしまった。これにより難を逃れた髑髏天使であった。
「この通りだ」
「やっぱり凄いね」
「大したことではない」 
 今度は髑髏天使が自信を見せるのだった。
「さっきも言ったがこの程度で俺は倒せない」
「確かにね。それじゃあ次は」
「どうするつもりだ?」
「少し本気を出させてもらうよ」
 その言葉と共にまた背中の羽根に手をやる。そこから一枚の羽根を毟り取る。するとそれは今度は弓になったのだった。漆黒の巨大な弓であった。 
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