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髑髏天使

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第二十九話 小男その二十三


「それはな」
「若しそうなったらはじめての髑髏天使になるね」
 目玉の声は幾分か怪訝なものに変化していた。
「かなり大変なことだけれど」
「その通りだ。だが魔物、そして魔神となればだ」
「やっぱり君の仕事をするんだね」
「そうだ。その魂を冥界に送り届ける」
 まさにそうするというのだった。
「そうしてやる」
「そうするんだね、死神として」
「それが私の仕事だからな」
「成程、面白いお話を聞きました」
 ここでまた老人が彼等に対して言ってきた。
「髑髏天使が魔物、或いは魔神になるとは」
「それが面白いというのだな」
「はい、とても」
 顔を綻ばせてさえいた。そのうえでの言葉である。
「面白いことです」
「そう言うのか」
「その通りです。それではです」
「その時は私が魂を刈る」
 本気の言葉だった。そこには何の偽りもなかった。
「生憎だが貴様等の仲間を新たに作ることはしない」
「もっともこちらも髑髏天使である限り闘わせてもらいますが」
「そうするというのだな」
「そうです。闘うのが魔物ですから」
「それはわかった。それではだ」
「また御会いすることになりますね」
 老人は楽しそうに彼に対して告げた。
「そしてその時にです」
「あの男が智天使になれば大きく動く」
 死神の言葉が強いものになっていた。
「そうなるな」
「はい、それではです」
「また会おう」
 魔神達に対して別れの言葉を告げた。
「そしてその時から大きく動くことになる」
「楽しみが増えました」
 老人の言葉はここでも笑っていた。
「果たしてどうなるのか」
「それか」
「はい。さて、では我々はこれで」
 その笑った声での言葉であった。
「去らせてもらいます」
「まさか瞬く間にここまでなるとは思わなかった」
 死神は魔神達が去っていく中でまだ呟いていた。
「智天使だとはな」
「そうだよね。こんなになるとはね」
 それに目玉も同意して応えてきた。目玉はまだ死神の上にいる。そこで浮かぶ様にして漂っているのであった。そうしてそこにいた。
「半年かそこらでそこまでっていうのは」
「なかった。恐ろしい早さだ」
「魔物との戦いの数が多いせいもあるけれどね」
「それでもあそこまで早いのはない」
「そうだね。それだけに、ってことだね」
「あの早さで智天使となれば」
 また言う死神だった。
「何が起こっても不思議ではない」
「それもあるね。只でさえ妙なものを感じてきているしね」
「どちらにしろだ」
 死神の言葉は怪訝なものになっていく一方だった。そして彼自身それを抑えようともしていなかった。彼にしては珍しく感情が言葉にこもっているのだった。
「魔物、そして魔神になるその時はだ」
「わかったよ。君も大変だね」
「できればだ」
「できれば?」
「闘いたくはないものだ」
 ふとこんなことも言うのだった。
「それはな」
「闘いたくないの」
「魂を刈りたくもない」
 こうしたことも口に出してきた。
「それはな」
「へえ、それは何でなの?」
「興味が出て来た」
 最初に返した返答はこれであった。 
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