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髑髏天使

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第二十九話 小男その二十一


「何でも努力しないとね」
「そうだな。俺も」
「さてと、それじゃあ」
 若奈はここまで話して声を明るくさせてきた。そうしてまた言うのだった。
「はじまるわよ」
「もうか」
「ええ。コンサートね」
 見ればバンドのメンバーが全員現れてきていた。いよいよであった。
 演奏がはじまっていく。若奈はそれを見ながらまた言うのであった。
「それじゃあね」
「聴くか」
「やっぱり生の演奏は違うわ」
 もう若奈はそちらに考えを向けていた。目が喜んでいる。
「コンサートに行くと本当にね」
「そうだな」
 牧村も彼女の言葉に頷きながら目をそちらにやっていた。当然耳もだ。
「この音がいい」
「本物は違うわよね」
「その通りだ。それではだ」
「聴きましょう」
 若奈は笑顔で彼にまた告げた。
「ゆっくりとね」
「そうだな。今はな」
 こうして二人そのバンドの曲を楽しむのだった。闘いの後は音楽であった。そしてそれは死神もそうであったり魔神達もだ。コンサートが終わって。
 死神はアリーナを出た。やはり外は夜である。濃紫の空には黄金の満月が浮かんでいる。その月の光の下で彼は何処かに去ろうとしていた。
 しかしであった。その彼の前にだ。魔神達がいた。
 彼もその姿に気付いて。すぐに顔を向けたのであった。
「闘いは終わった筈だが」
「はい、それはわかっています」
 老人が彼に応えてきた。彼等の中心にいてそこから言ってきた。
「それについては」
「では何故ここに来た?」
「今から帰るところでして」
 こう彼に返すのであった。
「それで通り掛かっただけです」
「それだけか」
「はい、それだけです」
 あくまでそれだけだというのである。
「何もしませんので御安心下さい」
「そうか」
「何か拍子抜けだね」
 ここで目玉も出て来て言ってきた。
「また来るのかって思ったのにね」
「私達にも流儀がありますので」
 老人は目玉の言葉にも丁寧に言葉を返しただけであった。そこには何の敵意もない。
「闘うその時以外にはです」
「何もしないんだ」
「その通りです。こうしてこの世界を楽しませてもらいます」
「それだけでいいのだな」
「はい、それだけです」
 死神に対しても同じ返答であった。
「それにしてもです。今回もお見事でした」
「私の鎌に斬れないものはない」
 死神はここで強い言葉を出してみせた。
「何であろうともだ」
「そうですね。それに」
「髑髏天使か」
「あの方もまた強くなられましたね」
 彼についても言うのであった。
「まさかあれだけ楽に勝たれるとは」
「思いも寄らなかった」
 今言ってきたのは小男であった。彼は老人の左隣にいる。そこから言ったのである。
「僕にしてもかなりの者を出したつもりだけれど」
「あの男の強さは尋常ではない」
 それは死神も認めるところであった。
「あれでは間も無くだ」
「智天使だな」
 今度は青年が言ってきた。
「そうなっていくな」
「そうだ。次の闘いにでもそうなるだろう」
「えっ、もう智天使!?」 
 これには目玉も驚いた声をあげた。
「それってかなりだよね」
「これだけ早いのは他に例がない」
 死神もこう目玉に返した。 
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