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髑髏天使

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第二十八話 監視その七


「それで味がね」
「よくなったのか」
「牛のことはよくわからないけれど」
 それは若奈の専門外である。彼女はあくまで喫茶店に関することだ。
「ただ。食べる牧草によってね」
「牛のミルクの味も変わるのか」
「そうみたいね。向こうの人が考えたらしいのよ」
「それでミルクの味もか」
「よくなったってことなのよ」
「成程な」
 若奈のその言葉に頷く。頷きながらティーカップを置いてその中にミルクを入れる。するとそのホットミルクの湯気が立ち紅茶の中の白いミルクが一旦底にいく。
 そこから沸き起こってミルクを次第に紅から薄い茶色に変えていく。紅茶とミルクが合わさった時になるあの色になったのである。
 その紅茶を飲むとだった。その味は。
「どうかしら」
「見事だ」
 これがこの紅茶への感想だった。
「これだけのロイヤルミルクティーはだ」
「滅多にないでしょ」
「ないな」
 このこともはっきりと言う。
「これは人気が出る」
「そうね。後は」
「コストか」
「それよ。値段がね」
 その問題もあるというのだ。若奈はここで腕を組んで述べるのだった。
「ほら、映画だって出来がよくてもお金をかけ過ぎたら」
「赤字になれば話にもならない」
「お店も同じなのよ。幾ら美味しくてもね」
「採算が取れるか取れないかだな」
「取れないと駄目なのよ」
 これは当然のことだった。言うまでもない程の。
「絶対にね」
「それではだ」
「そうなのよ。結構これ高くなるのよ」
「やはりそうなるか」
「それがね」
 若奈はここで少し困った顔になった。
「ネックなのよね」
「このお茶のか」
「特製ロイヤルミルクティーね」
 その商品名も決まっているようだった。
「これだけれど」
「問題はコストか」
「うちで扱っているお茶の葉で一番高いのよ」
 顔に出ている困った色はさらに深くなっている。
「一番ね」
「それの値段もか」
「どうしても高くなるのよ。出しても売れるかしら」
「宣伝だな」
 牧村は若奈の話をここまで聞いて述べた。
「それだとだ」
「宣伝?」
「そうだ、それだ」
 まさにそれだというのである。
「宣伝があればそれでもいけるだろう」
「宣伝ねえ」
 若奈は今の彼の言葉を聞いて腕を組んだ。そうして。
 困った顔を考える顔にしてだ。また言うのだった。
「特別な紅茶ってことでなのね」
「そのイギリス王室だな」
「ええ」
 とにかくそれである。そこが使っているからこそのコストである。これはもう言うまでもなかった。つまり権威がコストを作ってしまっているのだ。
「それだけれどね」
「それならイギリス王室が使っているということをだ」
「宣伝しろってことなのね」
「それでどうだ」
 あらためて彼女に問うた。 
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