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髑髏天使

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第二十八話 監視その四


「それも豚骨のね」
「若奈も豚骨ラーメン好きだな」
「ええ、好きよ」
 豚骨ラーメンに対してはにこりと笑って返した。
「もうあのこってりとしたのがいいのよ」
「そうだったな。けれどラーメンはどれでもいいだろ」
「豚骨もトリガラもね」
 どちらもいけるというのである。
「味噌ラーメンも醤油ラーメンも塩も」
「どれもだったな」
「おうどんもおそばもだし」
 とにかくどれもいけるのだった。ラーメンに限らずだ。
「それにしても九州だったら」
「ホークスか?」
「それよね、やっぱり」
 まさにそれだった。最早九州といえばホークス、それはもう決まっていることになっていた。
「その人もやっぱり」
「ああ、ホークスファンだよ」
「そうでしょうね。やっぱり九州だとね」
「それだからな」
「ホークスじゃないと駄目ってわけじゃないわよね」
「あとライオンズだな」
 このチームも話に出て来た。しかし若奈はライオンズの名前を聞くと怪訝な顔になった。それでその顔で父に問い返したのだった。
「何でライオンズもなの?」
「昔は九州にあったんだよ」
 その遥か昔の話をするのだった。
「昔はね」
「そうだったの」
「西鉄ライオンズとか知らないか?」
「西鉄!?」
 それを聞いても言葉は怪訝なままだった。
「何それ」
「九州の鉄道会社でそこがライオンズの親会社だったんだよ」
「その会社がなの」
「それで紆余曲折があって西武が親会社になったんだよ」
 そこまで話すのだった。
「所沢になってな」
「何かチームにも歴史があるのね」
「ホークスだって元はあれだろ?大阪のチームだったじゃないか」
「南海よね」
 これは若奈も知っていた。子供の頃この父に教えてもらったことである。
「南海ホークスだったわよね」
「そうだよ。南海だったんだよ」
「近鉄とか阪急の時代よね」
「杉浦が巨人を成敗したんだよ」
 ここで父の顔は一気に晴れやかなものになった。彼が巨人を嫌っているのは間違いない。とにかく巨人は関西では、野球を真に愛する人間には人気がない。
「日本シリーズでな」
「本当に昔のお話なのね」
「そういうことさ。それじゃあな」
 やっと店の奥に向かうのだった。
 店は牧村と若奈の二人だけになった。すると彼女は急ににこりとなって彼に声をかけてきた。
「あのね」
「何だ?」
「美味しいかしら、今の紅茶」
 そのことを彼に尋ねるのである。
「それは」
「美味い」 
 マスターに対するのと同じ返答を返した。
「いい感じだ」
「そう、よかった」
 若奈はそれを聞いて満足した顔で微笑んだ。
「お父さんが考えた第二のルートなのよ」
「お茶を手に入れるか」
「今までコーヒーもお茶も両方共同じお店から仕入れていたのよ」
 そうだったというのだ。
「けれどそこコーヒーが専門なのよ」
「コーヒーがか」
「紅茶はあまり強くなくて」
「それで紅茶は特別にか」
「そう、ルート変えたの」
 この話を彼にするのだった。 
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