| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髑髏天使

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十七話 仙人その十四


「わしなのじゃ」
「貴様がその魔神か」
「左様」
 彼は名乗った。その仙人を思わせる風貌でだ。
「ヤクシャだ」
「ヤクシャというと」
「日本では夜叉と言った筈じゃ」
 それだと自分から髑髏天使に教えてきたのだった。
「それじゃよ」
「そうだったか。夜叉か」
「そうじゃ。わしはそれじゃ」
「ではその夜叉がか」
 その仙人に対しての言葉だ。
「俺の今の相手か」
「その通りじゃ。まずは髑髏天使よ」
 座禅を組んだ様な姿であった。その姿で彼に言ってきたのだ。
「わしの手の者と闘ってもらおう」
「死神よ」
 男は彼に声をかけるのだった。
「貴様の相手はだ」
「貴様だというのだな」
「そうだ」
 死神のその返答にも応えるのだった。
「それでいいな」
「相手は誰でもいい」 
 既にその手に鎌を持っている。それで男を指し示しての言葉だった。
「この鎌で命を断ち切るだけだ」
「それだけだというのだな」
「他に何がある」
 鋭い言葉であった。
「あるのか。どうなのだ」
「ないな」 
 男もそれはわかっていた。だから今の返答だった。
「そういうことか」
「そうだ。ではいいな」
「俺の魔物はだ」
 言うとだった。彼の後ろから出て来た。それは。
 黒い球体のものだった。周囲にコロナの如く散った様なものが出ている。それを見ると黒い太陽に見える。独特の姿をしていた。
 そしてその中央には巨大な単眼があった。それで彼を見据えているのだった。
「貴様は確か」
「バックベアード」
 魔物の方から語ってきた。
「知っているのだな」
「その名、よく知っている」
 こう返す彼だった。
「そうか。貴様が出て来たのか」
「そういうことだ」
「では相手をしてやる」
 鎌を両手に持ち直した。そのうえでの言葉だった。
「この鎌で冥府に送ってやろう」
「それではだ。はじめよう」
 彼等の闘いが今はじまった。そうして仙人と対峙している髑髏天使もだ。彼に対して言うのであった。
「ではその魔物はだ」
「既にここにいる」
 仙人は髑髏天使のその問いに答えた。
「ここにだ」
「では呼ぶのだな」
 仙人に対して告げた言葉だった。
「その魔物をだ」
「い出よ」
 こう言うとだった。月からそれはやって来た。
 まず月に小さな黒点が出来た。それは次第に大きくなってだ。そうして蝙蝠の禍々しい翼を持った漆黒の猿が来たのであった。
「それが俺の今の相手か」
「不服か?」
「空だからか」
 その魔物が何故来たのかは最早愚問であった。
「だからそれなのか」
「そうじゃ。それで返答は」
「いいだろう」
 冷静な言葉で返した彼だった。
「相手をしてやる」
「左様か。それではじゃ」
「来い」
 仙人に対した言葉ではない。魔物に対した言葉だった。
「倒す。それだけだ」
「それだけだというのだな」
「そうだ。それだけだ」
 名前を聞こうとしないのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧