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髑髏天使

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第二十六話 座天その九


「他は何も変わりがない」
「何か全然面白くないけれど」
 実際に極めて面白くなさそうな顔になる妹であった。
「っていうかわざとつまらなく話してない?大体お兄ちゃんお酒飲まないじゃない」
「飲めないと訂正しておくことだな」
 やあhりぶしつけな返事であった。
「そこはな」
「じゃあそうしといてあげるわよ」
 売り言葉に買い言葉であった。
「飲めない、これでいいのよね」
「それでいい」
「それでね」
 再度兄に対して問うた。言葉は自然と荒いものになってしまっているのは感情が出てしまっているからに他ならない。そしてそれを隠すつもりもなくなっていた。
「何も変わらないのよね」
「そうだ。ただ歳を取るだけだ」
「何処が面白いのよ」
 話を聞き終えてつい言ってしまった言葉だった。
「若奈さんみたいな美人になれるとかじゃないの」
「何もならない方がいい」
 微かに感情を込めてしまった言葉である。
「何もな」
「何もって?」
「何もないのが一番いいのだ」
 妹の問いに答えずにまたこの言葉を出してきたのだ。
「何もな」
「言っている意味が強烈にわからないけれど」
「普通の人間でいられたら一番いい」
 やはり妹に答えるのではなくこう言うのであった。
「それがな」
「よくわからないけれど」
 どうしても兄の言葉の意味がわからず首を捻る。しかし言葉は出すのであった。
「つまりね」
「ああ」
「こういうこと?平凡が一番いいってこと?」
 眉を顰めさせたうえでの問いであった。
「つまりは」
「そう考えておけばいい」
 彼もまたそれでいいとしたのだった。本心を隠してである。
「それでな」
「平凡ね」
「そうだ。平凡だ」
 まさにそれだというのである。
「それが一番いい、何につけてもな」
「じゃあ私には無理じゃない」
 兄の平凡という言葉を受けてこんなふうに返す妹であった。
「私にはね」
「何故無理だ?」
「だってこんなに美人じゃない」
 すると彼女は楽しそうに笑ってこう言ってみせたのである。
「こんな美人があれよ。平凡なわけないじゃない」
「そこまで言うのならアイドルにでもなるのだな」
「じゃあなるわ」
 ここでも売り言葉に買い言葉だった。
「事務所に履歴書でも送ってね」
「未久ちゃんがアイドルになるの」
 若奈はその話を聞いて述べた。
「何かそれも面白いかもね」
「トップアイドル目指します」
 もうそのつもりになっている彼だった。
「国民的アイドルになります」
「そうよね。街中に未久ちゃんのポスターがあるっていいわ」
「期待していて下さいね」
「ならそれを目指してもいい」
 兄として随分放任的な言葉だった。
「御前がそうしたいのならな。なってしまったよりなってしまう方がいいかも知れない」
「?」
 今の兄の言葉にまた首を傾げる妹だった。
「なってしまったよりなってしまう方が?」
「受身より攻める方がいいのかも知れない」
 彼はまた言った。
「それが人のものなら余計にな」
「余計に訳がわからないんだけれど」
 未久はまた首を傾げるのだった。兄の言葉がどうしてもわからないのである。そしてそれは彼女だけでなく若奈も同じであった。 
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