髑髏天使
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第二十六話 座天その二
「公にはできんものじゃ」
「何か残念だよね」
「全く」
妖怪達もこういった重大な発見が公にできないことにかなり残念な様子である。
「歴史が覆るっていうのに」
「それが発表できないなんて」
「そういったものは案外多いのじゃよ」
しかし博士は彼等にも言うのだった。
「実際わしはそういうのも随分持っておるぞ」
「随分ねえ」
「持ってるんだ」
「うむ、このパピルスだけではない」
それだけではないという。
「他にも随分と持っておるぞ」
「何か凄いね、博士って」
「じゃあこの研究室は」
「例えばじゃよ」
その後ろの何処まで続いているのはわからない本棚を振り返っての言葉である。この本棚のある研究室にしろどれだけ広いかわからない謎の部屋である。
「カルタゴ人がアメリカ大陸を発見したという資料もあるぞ」
「魔神絡みで公にできないのだな」
「その通りじゃ」
まさにそうだというのであった。
「貴重な発見なのじゃがな」
「カルタゴ人はアメリカ大陸まで行っていたのか」
「カルタゴの航海技術はかなりのものだったからのう」
だからそれもあるのだと。博士は言うのである。
「ジブラルタルを超えてアフリカ西海岸にも普通に行っておったしそのアメリカ大陸にもじゃよ」
「他にも行っていたのか」
「あとはイギリスにも行っておったし喜望峰にも到達しておった」
こうも話すのである。
「そうしたところまでじゃ」
「凄かったんだね、カルタゴ人って」
「よく知らなかったけれど」
妖怪達も博士の話を聞いて言い合う。
「それもかなり」
「あの時代にそこまでしていたなんて」
「まあ俗に言われていることであるのじゃ」
それはあるというのである。
「しかし確証はない話じゃからな」
「その確証は博士が持っていて」
「決しても表には出せないってことなんだね」
「そういうことじゃ。残念なことにのう」
とはいってもやはりあまり残念そうには見えない今の博士の口振りであった。
「まあそれでじゃ」
「今読んでいるパピルスはあの魔神のことなのだな」
「その通りじゃ。これで九人じゃったか」
「そうだったな。それだけだな」
牧村は話を聞きながら頭の中でこれまで出て来た魔神達のことを思い出す。反芻するようにして思い出してきたその名前がである。
「全部で十二だったな」
「左様、残りは三人じゃが」
ここで博士はその魔神達のことをさらに話してきた。
「まずは百目に九尾の狐、ウェンティゴ、クグマッツ、バジリスク、狼男、バンパイア、逆さ男に次に出て来たそのキリムじゃな」
「それで九か」
「残るは三柱。一応場所がわかっておる者達もおる」
「わかっているものもか」
「まずインドじゃ」
そこだというのだ。俗に悠久の国と言われている。永遠の歴史と深い叡智を持っているとされているその国にいるというのである。
「そこに一柱」
「そこだけか」
「あとはオセアニアじゃ」
そこだというのだ。
「最後だけが今一つわからんのじゃが」
「そうか。それはか」
「何処じゃろうな。南洋じゃろうか」
首を傾げながら述べる博士だった。
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