髑髏天使
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第二十五話 魔竜その十四
「闘いは我々にとっては生きがいであると共に最高の娯楽だからな」
「だから遊びだというのか」
「そういうことだ。それではだ」
スタジアムの入り口に通じる白い階段をゆっくりと降りて来る。そのうえでその下にいる牧村のところに来てそうしてまた言うのだった。
「準備はいいか」
「できていなければどうするというのだ?」
「その時は仕方がない」
紳士の言葉はまさに遊びを誘うものであった。
「去るだけだ」
「安心することだ。去る必要はない」
これが牧村の返答だった。
「特にな」
「それでは闘うのだな」
「だからこそ俺はここにいる」
牧村は己の前に来たその紳士に対してまた告げた。
「これでわかったな」
「わかったと答えよう。それではだ」
「来い」
今度は一言だった。
「相手をしてやろう」
「いいだろう。それではだ」
指示を出そうとした。しかしここで。また一人姿を現わしたのであった。
「待ってもらおうか」
何者かの声がした。
「それはまだな。ヴァンパイアよ」
「そういえばそうした頃だったな」
紳士はその声を聞いても動じたところも驚いたところも何もなかった。首も顔も動かすことなくただこう声をあげただけであった。
「貴殿が出て来る頃だったな」
「久しいな」
その言葉と共にであった。黒い肌を持ち上半身は薄いタンクトップに身を包み下はデニムの青いミニを着た女が出て来た。髪は黒く長い。それが波がかっている。目は漆黒で黒檀を思わせる輝きを放っている。その女が今二人の前に出て来たのであった。
「暫く振りだが元気そうで何よりだ」
「そうだな。お互いにな」
「魔神か」
牧村は己の右手に姿を現わしたその黒人の女を一瞥して述べた。
「また出て来たのだな」
「私が魔神だとわかるのか」
「そこにいるキザな男が魔神なのはもうわかっている」
紳士を見ての言葉である。
「そしてそれと対等に話すのならばだ」
「それで私が魔神とわかるのだな」
「その通りだ。だが貴様の正体まではわからない」
「キリム」
彼女から名乗ってきたのだった。
「それが私の名だ」
「キリムだと?」
「どうやらこの時代の髑髏天使はまだ貴殿のことを知らないようだな」
紳士は今の牧村の言葉を受けて黒い美女に対して言った。
「まだな」
「その様だな。では覚えておくことだ」
彼女から牧村に対して告げてきた。
「私の名はキリムだ。今も言ったがな」
「そしてどういった魔神だ」
「私もまたアフリカにいる。あの逆さ男と同じくな」
「だからその肌か」
「その通りだ。私は北を司る」
彼女がいるのはそこであった。
「あの者とはまた別の場所にいる」
「そこにか」
「そして私の真の姿は七つの頭を持つ竜だ」
それだというのである。
「その姿は今は見せないでおこう」
「見せてくれと頼むつもりもない」
牧村はここでも素っ気無い態度である。
「別にな」
「無愛想なものだな」
「それが何か問題があるのか」
「私にとっては問題はない」
美女もまたこう返すだけだった。
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