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髑髏天使

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第二十五話 魔竜その七


「それがあるからこそ人間であり妖怪であるのじゃよ」
「それじゃあさ、博士」
「感情をなくしたら」
「その時はまさか」
 妖怪達は一斉に博士に対して問う。
「魔物になるの?」
「そっちかな」
「そこはまだよくわからん」
 博士でも、というのである。
「しかしいいものにはならんじゃろうな」
「魔物でも感情はあるからね」
「それも感情強いよね」
「そうそう」
 魔物にしろ感情はある。それは間違いなかった。妖怪達にしろ牧村にしろそれはよくわかっていることだった。
 このことを確かめてから。彼等はさらに言葉を交えさせるのだった。
「それでだけれど」
「牧村さんが若し」
「若しだよ」
 妖怪達はこのことを断ってそのうえで彼に対して言ってきた。
「感情がなくなったら」
「どうなるの?」
「髑髏天使じゃなくなるの?」
「さてな」
 牧村は彼等のその問いに首を横に振った。
「それは俺にもわからないことだ」
「わからないって」
「自分のことなのに」
「それでもわからないの」
「いや、待つのじゃ」
 ここでまた博士が話に入って来た。
「それがわかる筈もないじゃろ」
「自分のことなのに?」
「わからないの」
「彼は髑髏天使であるが髑髏天使が何なのかは知る術がないのじゃ」
 だからだというのである。
「知る術を持っているのはわしだけじゃよ」
「博士だけ」
「じゃあ博士が調べていって」
「それでわかることじゃ」
 そうだというのである。
「そのうえでじゃよ」
「それだと牧村さんは知らないんだ」
「髑髏天使であっても」
「そういうことじゃよ。そしてじゃ」
「そして?」
「わしが知っておることも僅かじゃ」
 今度はこう言う博士だった。
「ほんの僅かじゃよ」
「知らないんだ」
「博士もまだ沢山のことが」
「とりあえず主天使にはなった」 
 そこまでは言った。
「しかしそれ以上の階級のことはわからん。それに」
「それに?」
「まだ何かあるの」
「階級以外にもあるようじゃな」
 博士はここで腕を組んだ。その髭に覆われた顔に深い思案の色が浮かんだ。
「どうやらのう」
「階級以外にも」
「まだあるんだ」
「どうやらじゃがな」
 確定はないのだった。
「あるようじゃ」
「俺にはまだ多くの謎があるのか」
 その当事者である牧村がそれを聞いて呟いた。
「まだ」
「あるのう」
 博士はまた彼に告げた。
「わかっていないことの方が遥かに多い位じゃ」
「そこまでか」
「髑髏天使の謎は多いのじゃよ」
 博士の言葉は続く。
「全てが謎と言ってもいい」
「髑髏天使になって結構経つが」
「いや、まだ半年にもなっておらんぞ」
 牧村の今の言葉はこう述べて否定したのだった。 
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