髑髏天使
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第二十三話 異形その二十
「それからはな」
「俺次第か」
「このことは言った」
炎に全身を包まれながらの言葉であった。今まさにその中に消えようとしている。
「それではな」
「さらばだ」
魔物に対して別れの言葉も告げた。
「消えるがいい」
魔物は今完全に青白い炎になった。髑髏天使はそれを見届ける。そしてその中で再び呟いた。今度出した言葉はこれであった。
「俺次第か」
魔物の言葉を受けてである。彼はその言葉を心の中でも反芻していた。そうしてその中で次第に消えていく青白い炎を見送っていた。
髑髏天使と大頭が闘っていた時。死神もまた宙を舞いつついつまでんと闘っていた。魔物はその細長い身体を自由自在に舞わせていた。
そうしてそのうえで。死神の周りを舞い続けているのであった。
「仕掛けては来ないのか?」
死神は彼が何時までも仕掛けて来ないのを見てこう問うた。
「まさかとは思うがな」
「すぐにわかる」
魔物はこう彼に言葉を返す。しかし攻めては来ない。
「すぐにだ」
「すぐにか」
「貴様とそのまま渡り合うことはできない」
魔物は舞いながら死神を見据えつつ言うのだった。
「俺ではな」
「少なくとも貴様のその手足では私と渡り合うことは無理だな」
いつまでんの手足は短く小さいものだ。爪も鋭いがそれだけである。嘴だけで死神の鎌と渡り合えるかというとどう見ても無理な話であった。
「それは自分でもわかっているのだな」
「最初からわかっていることだ」
こう返す魔物であった。
「それはな」
「そうか。最初からだ」
「だからこそだ」
そのうえでという言葉であった。
「こうしているのだ」
「蜘蛛が糸で獲物を絡め取っていくのならともかく」
相変わらず己の周りを舞い続ける魔物に対しての言葉である。
「そうして舞い続けて何の意味があるのだ」
「そろそろか」
死神には応えていない言葉だった。
「そろそろ効いてくるな」
「効く!?」
「そうだ。効いてくる」
魔物は言ってきたのだった。
「次第にな」
「効くか」
「貴様は確かに強い。しかしだ」
「しかし。何だというのだ?」
「それはあくまでその身体が万全ならばだ」
そうならばだというのである。その言葉には明らかに何か深いものがあった。
「その場合にだ」
「それではだ」
死神は今の魔物の言葉から二段も三段も踏み込んで察したのだった。
「その私の身体を万全でなくする」
「そういうことだ」
「つまりだ」
言葉を続けていくのだった。その察したものを述べていき。
「貴様のその毛を撒き散らしていたのだな」
「そこまで察するか。流石に我等の同胞を数多く送っただけはあるな」
「簡単な話だ。意味もなく私の周りを飛ぶ筈もないからな」
そこからも察したのだった。彼の読みはかなりのものだった。
「それならばだ」
「全ては察したか」
「そしてその毛にはだ」
死神はさらに己のその言葉を出していくのであった。そうしてそこにあるものは。
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